BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

人文/思想

『ソクラテス - われらが時代の人』ポール・ジョンソン

『ソクラテス - われらが時代の人』ポール・ジョンソン 永遠に新しい、愛されキャラのソクラテス本。「おそらくそうであっただろうソクラテス像を描きだすことに成功している」と中山元が書いてるんだから、この本はアタリだな。ところで醜男とは何だ。ルッ…

『カール・バルト - 神の愉快なパルチザン』宮田光雄

『カール・バルト - 神の愉快なパルチザン』宮田光雄 バルメン宣言でも知られるカール・バルトの評伝。バルメン宣言は原理主義的すぎて、距離を置きたいとこだが、相手がナチだから仕方なかったのかもな。それにバルトにはユーモアの感性があったというから…

『恐怖の哲学 - ホラーで人間を読む』戸田山和久

『恐怖の哲学 - ホラーで人間を読む』戸田山和久 良著連発の戸田山和久が、またしてもナイスアプローチ。素朴な疑問から掘り下げていくのが、一番スリリングな思索につながる。でもって、憎めない顔つきの戸田山が、ホラー映画を本気で怖がってる姿を想像す…

『ゲゲゲのゲーテ』水木しげる

『ゲゲゲのゲーテ』水木しげる 水木サンの遺作とも言える本作。一見朴訥、しかし超然。本人のあの風格は、真の意味での「ゲーテとの対話」によって育まれたものだろう。ただひとつのテキストを飽くことなく読み返し、我が身の血肉となるまで咀嚼する。究極の…

『13人の誤解された思想家』小浜逸郎

『13人の誤解された思想家』小浜逸郎 プラトン、マルクス、ハイデガーなど13人の超メジャーな思想家をあらためて読み解こうとする本。著者の小浜は、『なぜ人を殺してはいけないのか』『やっぱりバカが増えている』『頭はよくならない』等を過去に書いていて…

『食糧と人類 - 飢餓を克服した大増産の文明史』ルース・ドフリース

『食糧と人類 - 飢餓を克服した大増産の文明史』ルース・ドフリース 2007年にマッカーサー・フェロー(通称「天才賞」)に選出された気鋭のコロンビア大教授ルース・ドフリースの意欲作。ビッグヒストリーが好きな奴なら、この一冊は外せないだろ。 科学力と…

『アクティブラーニング(シリーズ 大学の教授法)』中井俊樹

『アクティブラーニング(シリーズ 大学の教授法)』中井俊樹 中央教育審議会の学習指導要領改訂で、にわかに脚光を浴びるようになったアクティブラーニング。話題沸騰のディープラーニングとは無関係。アクティブラーニングは、教授が未知の問題を解くため…

『クルアーンを読む - カリフとキリスト』中田考/橋爪大三郎

『クルアーンを読む - カリフとキリスト』中田考/橋爪大三郎 橋爪大三郎に中田をぶつけてきたか。無茶苦茶な企画だな(褒)。太田出版の剛腕にリスペクト。この二人が出会うことで、どんな結果となったのかは分からないが、とにかくヤバいものに仕上がった…

『サッカー右翼 サッカー左翼 - 監督の哲学で読み解く右派と左派のサッカー思想史』西部謙司

『サッカー右翼 サッカー左翼 - 監督の哲学で読み解く右派と左派のサッカー思想史』西部謙司 戦術バカの西部謙司が政治の本を出すわけがなく、いつもながらサッカーの話だ。今回はざっくりとゲームスタイルを右派と左派に分類してヨタを飛ばしている感じだな…

『虚無感について - 心理学と哲学への挑戦』ヴィクトール・E・フランクル

『虚無感について - 心理学と哲学への挑戦』ヴィクトール・E・フランクル 世界的スーパーロングセラー『夜と霧』で知られるV・E・フランクルの未邦訳テキストが一冊に。アウシュビッツを生き延び、ロゴセラピーを提唱したフランクルが語る虚無感と、その対処…

『森は考える - 人間的なるものを超えた人類学』エドゥアルド・コーン

『森は考える - 人間的なるものを超えた人類学』エドゥアルド・コーン 紹介文に示されている世界観がヤバい。ふつう人間は同じような世界観を生きてるもんだけど、ここで紹介されてるルナ人のそれは、現代日本人のものとは相当かけ離れてる。いくらか人類学…

『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平

『ぼくらの仮説が世界をつくる』佐渡島庸平 まさしくその通りなタイトル。世界は変わり続ける。それは仮説によって世界がつくり変えられるからだ。著者の佐渡島は、漫画『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』を手掛けた編集者であり、作家エージェント会社コルクを立…

『日本‐呪縛の構図』R・ターガート・マーフィー

『日本‐呪縛の構図』R・ターガート・マーフィー 『日本経済の本当の話』で一気に評価を上げたターガート・マーフィーの新刊は、やはり日本がテーマだ。しかし今度は経済限定ではなく、日本そのものを語ろうとしている。こういった野心的な試みは、おうおうに…

『英語学習のメカニズム - 第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法』廣森友人

『英語学習のメカニズム - 第二言語習得研究にもとづく効果的な勉強法』廣森友人 このところ流行している第二言語習得研究ベースの学習本。信頼の大修館書店から。 英語科教員や研究者の間で注目を集めている第二言語習得理論にもとづき、学習者の個性に合っ…

『古代世界の呪詛板と呪縛呪文』ジョン・G. ゲイジャー

『古代世界の呪詛板と呪縛呪文』ジョン・G. ゲイジャー 見るからにおどろおどろしいカバー写真。タイトルで「古代世界」と、さも現代と無縁のように書いてるが、呪詛板も呪縛呪文もオンラインではバリバリの現役だぜ。著者はこいつ。京都大学学術出版会から…

『刑法と戦争 - 戦時治安法制のつくり方』内田博文

『刑法と戦争 - 戦時治安法制のつくり方』内田博文 挑発的なサブタイトルとは裏腹に、書体やカラーリングも含めて古めかしいカバーが激渋。神田の古本屋街に並んでても違和感ない。皮肉でも何でもなく超クール。新しいのに古い。古いのに今に通じる。俺には…

『中世と貨幣 - 歴史人類学的考察』ジャック・ル・ゴフ

『中世と貨幣 - 歴史人類学的考察』ジャック・ル・ゴフ フランスを代表する知性ジャック・ル・ゴフによる貨幣本。歴史人類学的アプローチというのが熱い。逆にこのスケールで貨幣を語ってハズしてたらマズいよな、巨匠的に。 『中世の高利貸』において高利貸…

『不合理性の哲学 - 利己的なわれわれはなぜ協調できるのか』中村隆文

『不合理性の哲学 - 利己的なわれわれはなぜ協調できるのか』中村隆文 表紙やコピーからイヤでも伝わってくる名著感。新刊なのに風格ある。 われわれが日頃あたりまえに合理的な価値基準に基づいていると考えている物事は、本当に合理的なのだろうか? 合理…

『犯罪の世間学 - なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか』佐藤直樹

『犯罪の世間学 - なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか』佐藤直樹 世間が犯罪を抑制するならば、世間が崩壊したら犯罪が横溢するって話か? いや、違うようだな。なるほど、そういう話か。オッケー、把握した。 日本独特の秩序で法のルール以前に私たちを…

『一般意志2.0』東浩紀

『一般意志2.0』東浩紀 あずまんの文庫化きてた。 「空気」を技術的に可視化し、合意形成の基礎に据える新しい民主主義を構想できないか。 ルソーの一般意志を大胆に翻案し、日本発の新しい政治を夢想して議論を招いた重要書。 一般意志2.0 ルソー、フロイト…

『キャラの思考法 - 現代文化論のアップグレード』さやわか

『キャラの思考法 - 現代文化論のアップグレード』さやわか 今さらキャラの話かよ、勘弁してくれ。ちまちましたサブカル周辺の糞アプデなら腹パンな。さやわかに期待して、いい意味で裏切ってもらいたい。 現実社会でもキャラを演じることが浸透した時代、い…

『ラテンアメリカ 21世紀の社会と女性』国本伊代

『ラテンアメリカ 21世紀の社会と女性』国本伊代 ラテンアメリカが「ジェンダー格差解消の先進地域」? ウッソだろ? と思ったら、ガチだった。 議席におけるパリティ(男女同数制)を法律で規定した国がすでに六カ国あり、アルゼンチン、ブラジル、チリでは二…

『だれが幸運をつかむのか』山泰幸

『だれが幸運をつかむのか』山泰幸 山泰幸教授といっしょに昔話を読む。さて、そこに描かれる幸せの構造とは何か? よく知られる昔話の多くがハッピーエンドで終わる。この幸せの物語を構造分析で解き明かすと「贈与」「援助」「交換」といったキーワードが…

『9条は戦争条項になった』小林よしのり

『9条は戦争条項になった』小林よしのり 挑発的で問題作っぽいタイトル。いつものよしりんだな。抜群の安定性。よしりんを世論の座標軸に置いとくと、何かと参考になる。あまりブレないので、逆に世論がどの方向に向かおうとしているのか、把握しやすくなる…

『天皇のイングリッシュ』保阪正康

『天皇のイングリッシュ』保阪正康 保阪正康の新刊は不思議なタイトル。着眼点がいい。名著の予感がする。 今上天皇は終戦直後の少年時代、米国からやってきたヴァイニング夫人によって英語教育を受けた。それは米国流の民主主義を学ぶことをも意味していた…