BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子 『竹取物語』の「かぐや姫」誕生の謎に迫る本。奈良時代に書かれた『日本書紀』を手掛かりに、中世ペルシア、飛鳥遺跡、神社の祭神、そして最古の『竹取物語』写本まで読み解き、「かぐや姫」が…

『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ

『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ 「ちょっと待って。ウンベルト・エーコの本って、それノンフィクションじゃなくない?」というツッコミがありそうだが、まったくその通り。小説です。だがエーコの小説は、そこいらの半端なノンフィクションよりか、実は…

『いのちをむすぶ』佐藤初女

『いのちをむすぶ』佐藤初女 先月1日に亡くなった佐藤初女、最後の書籍。ダライ・ラマ法王と映画に出演したり、「森のイスキア」を主催したりで、東北のマザーとも呼ばれていた。94歳まで生きたので大往生だと思う。合掌。ただ手料理をふるまうだけで、人を…

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 2015年にノーベル文学賞を受賞した、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのデビュー作。ただし内容的にはノンフィクション(そもそも著者はジャーナリストなので)。『ボタン穴から見た戦争…

『仕事の壁にぶつかった僕に、たとえば宇宙人なら何を教えてくれるだろう?』森まりも

『仕事の壁にぶつかった僕に、たとえば宇宙人なら何を教えてくれるだろう?』森まりも どこから突っ込めばいいのか分からないが、まあ色いろヒドい。いちおうビジネス自己啓発書? 表紙イラストは、しりあがり寿。タイトルはラノベ風。宇宙の彼方にある誕生…

『世直しの思想』鎌田東二

『世直しの思想』鎌田東二 「いまの世間は間違ってる!」とでも思っていなければ、こんなタイトルの本を書くことにはならない。だから『世直しの思想』という本を書くのも、なかなかの世直しである。しかし鎌田センセイの考える世直しなので、ちょっと予想が…

『JUN AOKI COMPLETEWORKS 3 | 2005-2014』青木淳

『JUN AOKI COMPLETEWORKS 3 | 2005-2014』青木淳/鈴木心/阿野太一 建築家 青木淳の作品まとめ10年分。『原っぱと遊園地』シリーズが猛烈におもしろかったので、それからずっと青木の新刊を待ってたが、まるで音沙汰なく、ようやく出たと思ったら作品集じ…

『組み立て×分解! ゲームデザイン - ゲームが変わる「ルール」のパワー』渡辺訓章

『組み立て×分解! ゲームデザイン - ゲームが変わる「ルール」のパワー』渡辺訓章 ケイティ・サレンとエリック・ジマーマンによる名著『ルールズ・オブ・プレイ』のことを思い出した。あれは解剖学のようにゲームを説明し尽くそうとした、クッソ真面目な(…

『刃物の下では不死身の生きもの! プラナリア実験観察図鑑』宮崎武史

『刃物の下では不死身の生きもの! プラナリア実験観察図鑑』宮崎武史 見た目が微妙にキモいプラナリアだが、そこそこ世の中には受け入れられていて、それなりにファンもいるようだ。これはその写真集と考えればいいかもしれない。いちおう「実験観察図鑑」…

『阪神タイガース「黒歴史」』平井隆司

『阪神タイガース「黒歴史」』平井隆司 国内外でいかなる出来事があろうとも、トップに阪神タイガース関係の記事を持ってくる、信念のブレない新聞デイリースポーツ。そのデイリーで虎番をしていた著者が阪神タイガースの黒歴史をまとめたもの、それがこの一…

『支配する人道主義 - 植民地統治から平和構築まで』五十嵐元道

『支配する人道主義 - 植民地統治から平和構築まで』五十嵐元道 本当のおもてなしは、目に見えない。もてなされる側が、もてなす側の気遣いを察知してしまい、それを負担に思って気苦労を感じてしまっては、それはもう「おもてなし」とは言えない。よって、…

『世界最強の女帝 - メルケルの謎』佐藤伸行

『世界最強の女帝 - メルケルの謎』佐藤伸行 ドイツ初の女性首相(3期目)アンゲラ・メルケルに迫ろうとした本。まったく知らなかったが、もともとは理論物理学の研究者だったのか。しかも夫はフンボルト大学ベルリンで量子化学の教授。そこらのリケジョとは…

『話がつまらないのは「哲学」が足りないからだ』小川仁志

『話がつまらないのは「哲学」が足りないからだ』小川仁志 ちょっとした雑談からでも、その人の教養なり、性格なり、センスなりが分かってしまう。そして、たしかに哲学のないヤツの話は、決まってつまらない。しかし哲学の知識があれば、あるいは哲学の小ネ…

『超一流の謝り方』千田琢哉

『超一流の謝り方』千田琢哉 タイトルにある通り、これは超一流の謝り方について書かれた本である。やはり超一流と言えども、うっかりミスや不手際と無縁ではないのだろう。そう考えると、なかなか趣きのある題名である。総合法令出版から出てるのも面白い。…

『女オンチ。 - 女なのに女の掟がわからない』深澤真紀

『女オンチ。 - 女なのに女の掟がわからない』深澤真紀 いる! こういう女、たまに見かける。女の掟を知っていて、あえてそれを無視する壊し屋タイプとは別に、そもそも女の掟が何なのかが分かってなくて、右往左往した挙句に掟を無自覚に破ってしまい、女社…

『国際バカロレアの数学 - 世界標準の高校数学とは』馬場博史

『国際バカロレアの数学 - 世界標準の高校数学とは』馬場博史 「バカロレアは次元が低すぎる」という批判は、批判のようでいて、批判になっていないと思う。あの次元の低さは、「未成年は勉強以外のことにもリソースをしっかり割くべき」、「それほど学力の…

『フローレンス・フォスター・ジェンキンス - 騒音の歌姫』ダリル・W・ブロック

『フローレンス・フォスター・ジェンキンス - 騒音の歌姫』ダリル・W・ブロック 公開中の映画『偉大なるマルグリット』の主人公であるフォスター・ジェンキンスの評伝。さんざん音痴だと言われていて、本当にそうなのか確認したところ、なるほど、完膚なきま…

『ダグラス・ノース 制度原論』ダグラス・ノース

『ダグラス・ノース 制度原論』ダグラス・ノース 去年11月に亡くなった、経済学の巨人ダグラス・ノースの実質的な遺作(他は共編著なので)、『Understanding the Process of Economic Change』の翻訳本。経済変化の本質は何か、制度はどう進化するのか、何…

『かんたん、おいしい! スティックおにぎり』八木佳奈

『かんたん、おいしい! スティックおにぎり』八木佳奈 このところ話題になってるスティックおにぎりの本。おにぎりを棒状にしたのでは、それはもうおにぎりではない(おにぎらずとは別の意味で)と思うが、その辺を気にしてはならない。何しろスティック型…

『トランパー - 伊予吉田の海運偉人伝 山下亀三郎と山下学校門下生』宮本しげる

『トランパー - 伊予吉田の海運偉人伝 山下亀三郎と山下学校門下生』宮本しげる タイトルにある「トランパー」とは、海運用語で船会社が運航する不定期船サービスの俗称で、海のタクシーとでも考えるといい。山下亀三郎は愛媛生まれの実業家で、山下汽船(現…

『なぜオーストリアは森でエネルギー自給できるのか - ヨーロッパ・バイオマス産業リポート』西川力

『なぜオーストリアは森でエネルギー自給できるのか - ヨーロッパ・バイオマス産業リポート』西川力 木質バイオマスのことを知らなかったので調べてみたら、意外と日本は健闘してた(国内で木質バイオマスが、ほとんど注目されてない割に)。林野庁のデータ…

『ゴミは会社を救う! - 環境と社会に良いことをして儲かる会社を創る方法』武本かや

『ゴミは会社を救う! - 環境と社会に良いことをして儲かる会社を創る方法』武本かや てっきり石坂産業の関係者が書いた本だと思ったら、違ってた。現在の石坂産業は、産廃業者にしては珍しく(失礼!)、環境にも経営にもやさしい、非常に合理的な方針でグ…

『小松菜奈1st写真集 - Trabzon』小松菜奈/後藤啓太

『小松菜奈1st写真集「Trabzon」』小松菜奈/後藤啓太 今月の写真集でもっとも目を惹いたのが、この一冊だった。しかし、レビューを読む限りさんざんな評価で、どうやら表紙が奇跡の一枚の模様。何てこった。めちゃくちゃ雰囲気あるのに、他の写真はイマイチ…

『鳥ってすごい!』樋口広芳

『鳥ってすごい!』樋口広芳 日曜は食後に『ダーウィンが来た!』を見ることが多いが、家の連中はこの番組のおもしろさがまったく分からないようで、「そんな動物番組の何がいいの?」とまで言われる始末。すっげー面白いのになー。とりわけバイオミメティク…

『読まなくても碁に勝つ法』竹清勇

『読まなくても碁に勝つ法』竹清勇 一ヶ月半ほど前までは、金で買ったインチキだと言われていた、Alpha Goによる勝利(樊麾二段との対局)。だが、それから本当にわずかな期間で、世界トップ級のプロ(イ・セドル九段)を倒すまでの力を得てしまった。デミス…

『日本を救う数式』柳谷晃

『日本を救う数式』柳谷晃 タイトルの気概がすばらしい。実際に日本を救える数式が存在するのか知らないが、そんなのに関係なく心意気が上等。著者の柳谷晃は、かつて『情熱大陸』に出たことがあり、なかなかの変人だったのも好印象。目の奥で笑いながら、世…

『それでも、海へ - 陸前高田に生きる』安田菜津紀

『それでも、海へ - 陸前高田に生きる』安田菜津紀 前作『ファインダー越しの3.11』につづく、フォトジャーナリスト安田菜津紀による震災の記録。津波による被害から、人々が静かに力強く立ち上がろうとする姿を、海に生きる漁師を通すことによってシンボリ…

『完全なる投資家の頭の中 - マンガーとバフェットの議事録』トレン・グリフィン

『完全なる投資家の頭の中 - マンガーとバフェットの議事録』トレン・グリフィン パンローリング社の「ウィザードブック」シリーズには、時としてこういう本物が紛れ込むから侮れない。ウォーレン・バフェットとバークシャー・ハサウェイについては説明不要…

『マティスの切り絵と挿絵の世界』海野弘

『マティスの切り絵と挿絵の世界』海野弘 晩年のマティスがハマった切り絵をまとめた一冊。個人的には油絵のマティスよりか、切り絵のマティスのが全然好み。世間的にはどうだか知らないが、こっちの方がよりマティスらしさが出てると思う。色彩と輪郭がいっ…

『そうだったのか、乗りかえ駅』西森聡

『そうだったのか、乗りかえ駅』西森聡 何かと不便することの多い乗り換え駅。本書を手にすれば、その駅の背後にあるエピソードを知ることができるので、それなりに納得できるようになるはずだ。相変わらず乗りかえで不便だったとしても。知識にはこういう効…