『だれのものでもない岩鼻の灯台』山下明生/町田尚子
『だれのものでもない岩鼻の灯台』山下明生/町田尚子
タイトル、カバー、テキストすべてがクールな絵本。
本書の主人公は灯台(無生物)だ。しかも絵本なのに、擬人化されてはいるものの、足がないから動けない。確かに灯台だから仕方ないとはいえ……、これでどうやって物語を進めようっていうんだ? さらには、この灯台は無気力と来ている。おいおい、物理的に動けなくて、主人公が無気力な性格してたら、話が進まないじゃないか!
これが御年80に近い巨匠の作というんだから恐れ入る。そして正しく巨匠の意味を理解する。巨匠とはその分野の可能性をあらたに切り開いてきた人物にこそふさわしい称号だからだ。もちろん本作でも、設定の困難さをものともせず、話はグイグイ展開され、最後に絵本らしいファンタジーを描いてみせる。さすがだ。また、町田のイラストも文句なしに素晴らしい。
岩鼻の灯台はひとりぼっちとなり、だれのものでもなくなりました。まいばん、暗い海をてらしていた明かりもきえてしまいました。もう、ラジオの音も子どもの笑い声もきこえません。きこえてくるのは、足もとの岩にうちよせる波の音だけ。
- 作者: 山下明生,町田尚子
- 出版社/メーカー: 絵本塾出版
- 発売日: 2015/12/19
- メディア: 単行本
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