『メッカ巡礼記1 - 旅の出会いに関する情報の備忘録』 イブン・ジュバイル
『メッカ巡礼記1 - 旅の出会いに関する情報の備忘録』 イブン・ジュバイル
これは現代のメッカ巡礼記ではない。12世紀の旅ブログと考えればいい。あるいは、ことりっぷとか、地球の歩き方みたいなもん。著者のイブン・ジュバイルは、当時すごい人気のブロガーで、後のカリスマ旅人イブン・バットゥータも、イブン・ジュザイーに旅行記をまとめさせる際、その手本としたほどだ。
さて、スペインはバレンシア生まれのジュバイルは、イスラム教徒であったが、ある時うっかり禁酒の誓いを破ってしまい、その罪を償うためメッカ巡礼を決意する。……とされているが、実態はもっと軽いノリだったと思うな。何しろブロガーだ。いや、YouTuberかもしれない。メッカに行く理由を作るために、わざと酒を飲んだことも考えられる。
さもなければ、その頃の交通事情や治安状況を考えると、メッカ巡礼は正気の沙汰ではない。十字軍とイスラム勢力が、そこかしこで衝突してるんだぜ(※この旅行記は、第二回と第三回の十字軍の間に挟まれてる)。旅の途中で命を落としかねないのに、「酒の罪を償うためメッカに行きたい」とか言うか?
それにSNSもATMも電子辞書もエアコンも抗生物質もない時代だ。どんだけ苦労するのさ。だがその分だけ、メッカに到着した時にはメチャクチャ達成感あったと思うし、道中もハンパなく面白かったろうな。これはその道中記だ。
イブン・バットゥータ『大旅行記』の手本となった旅の記録。十字軍時代の社会を克明に活写。
第1巻はグラナダを出発し、地中海、エジプトを経て、メッカに至る。
メッカ巡礼記1: 旅の出会いに関する情報の備忘録 (東洋文庫)
- 作者: イブンジュバイル,家島彦一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2016/01/18
- メディア: 文庫
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