BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『僕はカンディンスキー』アナベル・ハワード

『僕はカンディンスキー』アナベル・ハワード

パイインターナショナルから出てる「芸術家たちの素顔」シリーズの一冊。このシリーズは軽すぎず、重すぎず、なかなか良い。興味がないわけではないものの、例えば300ページ前後もあるような単著を読む気はしない。そんな時に重宝する。1時間もあれば読み切れるボリュームだ。

さて、ワシリー・カンディンスキーといえば、バウハウスの学生から「カンディンスキーは推測などしない。宣言するんだ」と評されるほど、理論派と見なされがちだ。しかし、実際のところは違うような気がする。理屈を話したいわけではないが、周りにそういう連中が集まってきてしまうので、やむなく理屈で話さざるを得ない、そんな具合。

周囲の勘違いは、カンディンスキーの妻ニーナ・アンドレエフスカヤ(Nina Andreievskaya)を、奔放で軽薄な女性と見なし、現在もまだ評価されてない辺りにも見てとれる。本当にニーナが愚かだったら、カンディンスキーは電話越しに恋に落ちないだろうし、その勢いで「To the Unknown Voice」のような傑作は描かないだろ。バウハウス時代の快進撃(「Several Circles」とか最高すぎる!)も、半分はニーナの手柄だと思うな。いや、ほんとに。

気持ちは分からないでもない。ソロモン・グッゲンハイムやデュシャンのような奴らが、大金を抱えてカンディンスキー宅まで買い付けに訪ねたら、ロボ顔で気難しそうなカンディンスキーの隣に、それとはまるで正反対の、しかも娘ほど歳の離れた女がいたら、だいぶ面食らうだろうよ。でも、そこに読み解くカギがあるのにな。どうして気づかないんだろう。ニーナ自身の抽象性に。

抽象絵画の創始者ともいわれる、カンディンスキー。画家として、美術評論家・バウハウスの教官として、国境を飛び越え、幅広い活躍を見せた。その類稀なる個性によって生まれた数々の傑作は、今なお色あせることを知らない。

僕はカンディンスキー (芸術家たちの素顔)

僕はカンディンスキー (芸術家たちの素顔)

  • 作者: アナベルハワード,アダムシンプソン,Annabel Howard,Adam Simpson,岩崎亜矢,池田千波
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2015/12/11
  • メディア: 単行本
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