『デイヴィッド・ヒューム - 哲学から歴史へ』ニコラス・フィリップソン
『デイヴィッド・ヒューム - 哲学から歴史へ』ニコラス・フィリップソン
どっかで見た名前だと思ったら、『アダム・スミスとその時代』を書いた奴じゃねーの。なるほどね、スミスつながりでデイヴィッド・ヒュームか。よほどこの時代が好きなんだな、ニコラス・フィリップソン。
だけど、ヒュームの代表作にして大風呂敷の『人間本性論』ではなく、『イングランド史』の方に注目したのか。まあ、ふつうは逆だよな。早熟な天才(あるいは重度の中二病)にしか書けない『人間本性論』に対して、『英国史』は平凡な学者にでも書けそうなもので、わざわざ注目しない。
ではニコラスは、あえて『英国史』を取り上げたのか? それは違うように思う。なぜなら『アダム・スミスとその時代』を書き上げることで、スミスを通してヒュームを見てきたはずのニコラスだ。そして、アダム・スミスの大傑作『国富論』は、ヒュームと出会ってから世に出ている。
一見するとヒュームの『イングランド史』は、『人間本性論』から大幅にスケールダウンしてる。ローカルなネタだし、史実を前にダイナミックな思考は展開しにくいからだ。では、後に激アツな『国富論』を書く友人スミスに会ってから、クソつまらない歴史本を書けるものだろうか。常識的に考えて、それはない。何かデカいネタを仕込みたくなるはずだ。
しかし、そうやって書かれたはずの『英国史』は、当時ロングセラーになったものの、思想家ヒュームの業績としては、長らく黙殺されてきた。だが、ニコラスは発見したんだろう。『イングランド史』の真価に気づいたんだ。ということは、これまで語られてこなかった何かが浮上してくる確率は高い。ひょっとすると……ひょっとするんじゃないの、これ!
『アダム・スミスとその時代』を著して、初めて等身大のスミスを分かりやすく提示した著者が、ヒュームの全体像に迫る好著である。
その際、著者が重視するのは、日本では(そして本国でも)ほとんど誰も取り上げてこなかった『イングランド史』である。
- 作者: ニコラス・フィリップソン,永井大輔
- 出版社/メーカー: 白水社
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ついでに前作の『アダム・スミスとその時代』も貼っとく。カバーの見分けが難しいな!
- 作者: ニコラスフィリップソン,永井大輔
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