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『美の考古学 - 古代人は何に魅せられてきたか』松木武彦

『美の考古学 - 古代人は何に魅せられてきたか』松木武彦

学校でまなぶ美術史といえば、バロック、ゴシック、ルネサンスといった、超ローカルでニッチな西洋美術史に集中しがちだ。たかだか数百年のとこだけ拾って、偏執狂のように些細なちがいをアレコレするのは、ほとんどサブカルの姿勢に近い。だが、考古学者は松木武彦の手にかかれば、事態は一変する。60万年前のホモ・ハイデルベルゲンシスの石斧をスタート地点に、美の歴史を見直そうってんだから、それこそケタ外れだ。

ところで、「考古学やってます!」ってだけで、世間は(カネにならなさそー!)と思うのに、「美的観点からの考古学です!」となれば、(その中でもメインストリームですらない!)と思うわけで、松木の苦労は想像できる。だが、そういった周囲のノイズが大きければ大きいほど、おもしろい作品が仕上がるってもんだ。逆のパターンはあんま見ない。不思議なものだな。

サントリー学芸賞を受賞した『列島創世記』をはじめ、『進化考古学の大冒険』、『考古学からみた戦争』など、刺激的な書物を世に送り出してきた松木。本作においてもまた新しい視点を世界にもたらすだろう。

石斧に始まり、縄文・弥生土器、銅鐸、古墳に至るまで、人類の歴史は「美」の歴史でもあった。
従来の考古学は物の機能や技術面ばかりを重視しがちだが、じつは「美」こそが、いにしえの人びとの在りかたを方向づけてきたのではないか。

美の考古学: 古代人は何に魅せられてきたか (新潮選書)

美の考古学: 古代人は何に魅せられてきたか (新潮選書)