BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『ドイツ修道院のハーブ料理 - 中世の聖女、ヒルデガルトの薬草学をひもとく』野田浩資

『ドイツ修道院のハーブ料理 - 中世の聖女、ヒルデガルトの薬草学をひもとく』野田浩資

「ドイツのハーブ料理が薬草学とリンクしてるなら、それはさながら漢方ならぬ独方になるのかな?」と思って、この本の背景をいろいろ調べてみたら、著者は元ボクサーで日本、ドイツ、ベルギー、スイス、モナコ等で料理人として働いた野田浩資で、聖女ヒルデガルトって人物がまた謎めいてて面白い。

詳しくはヒルデガルト・フォン・ビンゲンのページに譲るとして、いろいろな角度から評伝も出てて、マイナーな世界ではメジャーな人物のようだ。立ち位置的にはボーダーな感じで、科学とオカルトの中間といったところ。ただし、11世紀から12世紀を生きた人物であり、サイエンスが確立してなかった時代性は考慮する必要がある。よって「ドイツ薬草学の祖」とする見方も、あながち間違いではないだろう(宝石療法とか神秘主義的なあれこれは論外として)。

この本は、その修道女ヒルデガルトが遺したレシピを、日本でも手に入りやすい食材で、できるだけ忠実に再現できるようにしたもの。個人的にこういったアプローチには、異色の経歴を持つシェフの方が得意だと思っていて、その点で野田はいい仕事をしたのではないかと予想する。

修道院の食生活は、自給自足を基本とし、野菜を育て、家畜を飼い、パンを焼き、ジャム、チーズ、ソーセージなども自分たちで作る生活。

たっぷりの季節の野菜や果物を中心に、ハーブやスパイスの健康効果を加味したヒルデガルトのレシピは、まさに健康食、ダイエット食として理想的です。


なお先日、魔女研究家の西村佑子を紹介したが、西村もヒルデガルトに手を出していて、『魔女の薬草箱』という本(表紙がマンドラゴラ)を過去に出している。しかし、こちらは料理本ではなく、薬学寄りになっているようで、それも劇薬やら毒薬やら麻薬やらにフォーカスされてて、あまり実用性(?)はないかもしれない。読む分には楽しそうだ。

bookhunting.hatenablog.com