BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治

大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治

歴史に「もし」は禁句だが、それでもやはり思ってしまう。「もし大久保が暗殺されていなければ?」

おそらく日本の歴史は大きく変わっていただろうし、アジアの中での立ち位置も、世界の中でのポジションも、ずいぶん違ったものになっていたはずだ。大久保利通は稀に見る大外交家であり、大政治家(藤田は「政事家」と書くことが多いが)であったからだ。

本書は、その大久保が描いていたであろう構想を、具体的な出来事をとりあげながら、浮上させようとしたものだ。一筋縄ではいかない、極めて入り組んだ国際状況下、最善手を探りつつ、その先に果たして何を見据えていたのか。

征韓論政変後、大久保利通華夷秩序の打破に向けた東アジア政策を展開するなかで、めざしたものとは何だったのか。

樺太問題、台湾出兵、清国との交渉、琉球併合、江華島事件、日朝修好条規締結。異なる秩序がぶつかる「対立・相克」の具体像と、戦争を回避した「妥協」の要因を、国家構想との関連で描く。