BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『呼び覚まされる 霊性の震災学』金菱清 編

『呼び覚まされる 霊性の震災学』金菱清 編

俺自身、霊感ゼロだし、霊性とか、その手の話は信じない。だが一方で、そういったことを感じたり、信じたりする人間がいることは分かる。そういう考えや感受性を持つ人間が実際にいるんだから、そこのところは否定しようがない。そして本書はノンフィクションである。語られる内容が、客観的には極めてフィクショナルなものであったとして、やはりそれはノンフィクションであると、俺も深く同意する。

なぜなら鎮魂は、そういったプロセスをたどるもので、法事に参加し、線香をあげたら完了する、といった単純なものではないからだ。震災からの復興を、本当に地元に寄り添う形で実現したいのであれば、例えばこの本を通して、慰霊の現場に列席する必要があるだろう。さもなければ、復興事業を進めるにあたり、町の風景をどのように再建したらよいか、その正しい手がかりは得られまい。

なぜか? ひょっとしたら傾いた電柱一本にも、何かしら故人の思い出と強固に結びついているかもしれない。そうすると、「工事で傾きを戻したら終了」ではなく、かえってその電柱をいっそう棄損したことにもなりかねない。目に見えないその差を感じるには、被災地での鎮魂がどのようなものであるか知り、それを自身のものとしても抱きしめねばならない。

亡くした家族が「生きていた」記憶を刻む慰霊と鎮魂、未曾有の悲しみを越えて死者とともに生きる人びとの強さを描く。被災地の生と死の現場に迫るノンフィクション。

呼び覚まされる 霊性の震災学

呼び覚まされる 霊性の震災学