BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『友情化する社会 - 断片化のなかの新たな「つながり」』デボラ・チェンバース

『友情化する社会 - 断片化のなかの新たな「つながり」』デボラ・チェンバース

小田嶋隆の『友だちリクエストの返事が来ない午後』(2015)は友情論で、読み始めこそ「今さら友情かよ、ダッセー!」と思ったが、現代のリアルですぐれたコミュニケーション論になってて、ふつうに良書だった。タイトルが文学的な表現で(最近は即物的なタイトルが流行りだからなー)、そこのところは時流に反してるが、小田嶋自身がそういうキャラだし仕方ない。

さて、岩波からも友情論が出てきた。これはやっぱ現在を読み解くカギとして、友情が浮上してきたことを意味するんだろう。何しろ社会の動向に鈍感な岩波から出てるんだから。と、ここで原著(『Contemporary Connections in a Fragmented Society』)を調べてみたら、2006年に出版されたものだった。これはまた中途半端に古いな。ブログは普及しているものの、SNSはまだ本格的に爆発していない、そんな時代だ。

まあ岩波だから流行りものに慎重になるのは仕方ないか。出版から十年が経過しているものの、しかしその分だけ、新しい古典としての強度はあるんだろう。その辺の眼力が岩波ブランドの源泉だからな。

「友情」を鍵概念に、人々の「つながり」の変容を理論的・実証的・歴史的に論じた社会学の名著。

断片化する社会で個が剥き出しになるなか紡がれる新しい「つながり」を考察。


友情化する社会――断片化のなかの新たな〈つながり〉

友情化する社会――断片化のなかの新たな〈つながり〉