BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『今までにないスイーツの発想と組み立て - 素材を活かした組み合わせのアイデアとテクニック』吉田菊次郎/中西昭生

『今までにないスイーツの発想と組み立て - 素材を活かした組み合わせのアイデアとテクニック』吉田菊次郎/中西昭生

IBMがシェフ・ワトソンを作るよりもずっと以前、スペイン伝説のレストラン「エル・ブジ(El Bulli)」では、鬼才フェラン・アドリアが極めて現代的なレシピ開発手法を確立し、ついには世界ベストレストラン50の1位を、4年連続で獲得するに至った。それまでの創作料理という枠組みを根本から変えたのは、アドリアのデータベース活用術的なレシピ開発にある。当時「エル・ブジ」の快進撃を見ながら、「日本にもアドリア的なシェフが現れたらいいのに……」と思ったのは、俺だけではあるまい。

だが、ついに時は来た。吉田菊次郎と中西昭生による本書は、日本スイーツ界に革命をもたらすかもしれない。もっと自由なスイーツのあり方を、エル・ブジ的に探求しようとしている。そうでなければ、魚介類や穀物、野菜といった、スイーツに縁遠いと思われる素材に、あえて目を向ける必要などないではないか。

おそらく多くの人は、この本の革新性が今はまだ分からない。それはちょうど、人工知能の指す将棋が、ヒトの目には悪手と思われる筋を深読みしたり、定石に反する一手を打ち込んだりした時に、「???」となるのと似ている。だが、やがて気づく。そういった中から、ごくごく稀に恐ろしく革新的なものが登場することに。そのインパクトの意味が分かるパティシエは、迷わず本書を手に取るべきだろう。

スイーツ作りはとても自由なのです。本書では、果実をはじめ、野菜、穀物、魚介類、飲料、はては時空を越えた世界にまでボーダーレスに遊ぶことができました。

ときには肩の力を抜いて、フリーダムにスイーツの世界に羽根を広げてみてはいかがでしょう。