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『支配する人道主義 - 植民地統治から平和構築まで』五十嵐元道

『支配する人道主義 - 植民地統治から平和構築まで』五十嵐元道

本当のおもてなしは、目に見えない。もてなされる側が、もてなす側の気遣いを察知してしまい、それを負担に思って気苦労を感じてしまっては、それはもう「おもてなし」とは言えない。よって、心遣いがありつつも、相手にそれを悟られないように振る舞うことが、本来のもてなしである。だから基本的に相手から、それは見えないものなのだ。

さて、人道主義はヘタな「おもてなし」によく似ている。これ見よがしで、場合によっては厚かましい。だが、国際政治には持ちつ持たれつの側面があるため、故意に見せつけることは、それなりに意味はある。外交カードの手の内を見せているわけで、お互いにコミュニケーションを取りやすい。しかしそうでありつつ、やはりそこには政治的な力学が働くため、どちらかに主導権が偏ってしまう。意図してそのバランスを操ろうとしているのであれば、人道主義の名を借りた、侵略と見なすこともできよう。

ところで、声高に人道主義を名乗る行為は、ジェントルマンを気取る奴の胡散クサさに通じるものがある。これは気のせいだろうか。

一九世紀の植民地統治から冷戦後の人道的介入・平和構築活動まで、介入・統治を「する側」「される側」の非対称な関係の生成に、人道主義が不可分に関わってきたことを示す。国際政治学への斬新な問題提起。

支配する人道主義――植民地統治から平和構築まで

支配する人道主義――植民地統治から平和構築まで