『孤高のハンセン病医師 - 小笠原登「日記」を読む』藤野豊
『孤高のハンセン病医師 - 小笠原登「日記」を読む』藤野豊
世にトンデモ学説はいくつもあるが、その中でもっとも下劣で愚かしいものは、差別と偏見を助長するために存在するトンデモ学説だ。癩予防法が施行されていた時代における、ハンセン病患者の強制隔離、断種を推奨していた学説なんか、まさにそれで、実に正しくクソだった。
そのクソな学説に真っ向から立ち向かい、しかし当時の医学界権威によって葬り去られたのが、この本で紹介されている医師小笠原登だ。歴史は小笠原に軍配を上げることになるが、それでもトンデモ学説によって小笠原が屈服させられた過去は消えない。
なぜそんな迷信じみた学説が、サイエンスの名のもとに大手を振るったのか気になるところ。単に当時の医学界のレベルが低かったことも理由のひとつに挙げられようが、「恐怖の全容が見えなかったことで過剰防衛に走った」とするのが実態に近いかもしれない。そんな時代にあって小笠原が説き、実践したことは、やはり相当な勇気と信念あってのことだと感じさせられる。著者は藤野豊。
ハンセン病患者をことごとく療養所に収容しようとした癩予防法のもとで、自らの医学的知見にしたがい、「絶対隔離の必要なし」と療養所外での自宅治療・通院治療を敢行した医師・小笠原登の「もうひとつのハンセン病治療」。
その思想と実践を、遺された日記・諸資料を駆使して検証、実体に迫る。
- 作者: 藤野豊
- 出版社/メーカー: 六花出版
- 発売日: 2016/03/03
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る