BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

人物

『楊 淑美・流ヴォイストレーニングBOOK 目覚めよ! あなたも知らない自分の声』楊淑美

『楊 淑美・流ヴォイストレーニングBOOK 目覚めよ! あなたも知らない自分の声』楊淑美 どうしよう、元タカラジェンヌの本を紹介するのは、妙に緊張する。しかしここは気にせず、ふつうのボイトレ本として紹介しよう。さて一般に、個人の声はそうそう変わら…

『孤高のハンセン病医師 - 小笠原登「日記」を読む』藤野豊

『孤高のハンセン病医師 - 小笠原登「日記」を読む』藤野豊 世にトンデモ学説はいくつもあるが、その中でもっとも下劣で愚かしいものは、差別と偏見を助長するために存在するトンデモ学説だ。癩予防法が施行されていた時代における、ハンセン病患者の強制隔…

『鮎川義介- 日産コンツェルンを作った男』堀雅昭

『鮎川義介- 日産コンツェルンを作った男』堀雅昭 鮎川義介による「事業は創作であり、自分は一個の創作家である」という言葉は、その波乱の生涯を見ると、深く納得させられる。たしかに創作家でもなければ出来ないような、非常に旺盛な事業展開だ。こういう…

『リトヴィーノフ - ナチスに抗したソ連外交官』斎藤治子

『リトヴィーノフ - ナチスに抗したソ連外交官』斎藤治子 旧ソ連の外交官マクシム・リトヴィノフの激アツな人生を辿った一冊。リトヴィーノフのことは、まったく知らなかったが、ちょっとプロフィールを見ただけでも、かなり波乱万丈な一生だ。この本では、…

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子 『竹取物語』の「かぐや姫」誕生の謎に迫る本。奈良時代に書かれた『日本書紀』を手掛かりに、中世ペルシア、飛鳥遺跡、神社の祭神、そして最古の『竹取物語』写本まで読み解き、「かぐや姫」が…

『世界最強の女帝 - メルケルの謎』佐藤伸行

『世界最強の女帝 - メルケルの謎』佐藤伸行 ドイツ初の女性首相(3期目)アンゲラ・メルケルに迫ろうとした本。まったく知らなかったが、もともとは理論物理学の研究者だったのか。しかも夫はフンボルト大学ベルリンで量子化学の教授。そこらのリケジョとは…

『フローレンス・フォスター・ジェンキンス - 騒音の歌姫』ダリル・W・ブロック

『フローレンス・フォスター・ジェンキンス - 騒音の歌姫』ダリル・W・ブロック 公開中の映画『偉大なるマルグリット』の主人公であるフォスター・ジェンキンスの評伝。さんざん音痴だと言われていて、本当にそうなのか確認したところ、なるほど、完膚なきま…

『トランパー - 伊予吉田の海運偉人伝 山下亀三郎と山下学校門下生』宮本しげる

『トランパー - 伊予吉田の海運偉人伝 山下亀三郎と山下学校門下生』宮本しげる タイトルにある「トランパー」とは、海運用語で船会社が運航する不定期船サービスの俗称で、海のタクシーとでも考えるといい。山下亀三郎は愛媛生まれの実業家で、山下汽船(現…

『小松菜奈1st写真集 - Trabzon』小松菜奈/後藤啓太

『小松菜奈1st写真集「Trabzon」』小松菜奈/後藤啓太 今月の写真集でもっとも目を惹いたのが、この一冊だった。しかし、レビューを読む限りさんざんな評価で、どうやら表紙が奇跡の一枚の模様。何てこった。めちゃくちゃ雰囲気あるのに、他の写真はイマイチ…

『完全なる投資家の頭の中 - マンガーとバフェットの議事録』トレン・グリフィン

『完全なる投資家の頭の中 - マンガーとバフェットの議事録』トレン・グリフィン パンローリング社の「ウィザードブック」シリーズには、時としてこういう本物が紛れ込むから侮れない。ウォーレン・バフェットとバークシャー・ハサウェイについては説明不要…

『マティスの切り絵と挿絵の世界』海野弘

『マティスの切り絵と挿絵の世界』海野弘 晩年のマティスがハマった切り絵をまとめた一冊。個人的には油絵のマティスよりか、切り絵のマティスのが全然好み。世間的にはどうだか知らないが、こっちの方がよりマティスらしさが出てると思う。色彩と輪郭がいっ…

『ピアノ、その左手の響き - 歴史をつなぐピアニストの挑戦』智内威雄

『ピアノ、その左手の響き - 歴史をつなぐピアニストの挑戦』智内威雄 局所性ジストニアの発症により、後天的に右手の自由を失った智内による、左手のピアノ音楽案内。ETV特集「左手のピアニスト」で智内のことを知った人もいると思うが、多くの人は左手のピ…

『ラマヌジャン - ゼータ関数論文集』黒川信重/小山信也

『ラマヌジャン - ゼータ関数論文集』黒川信重/小山信也 『ラマヌジャンζの衝撃』の黒川信重と、『素数からゼータへ、そしてカオスへ』の小山信也による、豪華なラマヌジャン本。黒川と小山はよく一緒に仕事してて、ラマヌジャンが取り結んだ縁だなー、と思…

『突破! リッチー・マコウ自伝』リッチー・マコウ/グレッグ・マクギー

『突破! リッチー・マコウ自伝』リッチー・マコウ/グレッグ・マクギー 「俺にまかせろ! ついてこい! 全部フォローしてやる!」そんな男気溢れる、リッチー・マコウの自伝。去年、現役からの引退を発表したが、そのリーダーシップは色あせることがない。…

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司 知ってるようで知らないことは、案外多い。たとえば、「標準語のクリエイターは誰?」と質問されて、すぐに答えられる奴は少ないだろう。俺も知らなかった。そもそも標準語は、誰かがリーダーシップを発…

『宿澤広朗 - 運を支配した男』加藤仁

『宿澤広朗 - 運を支配した男』加藤仁 ラグビーで日本がスコットランドに勝った過去を知らなかった。そんな番狂わせがラグビーでも起こりうるんだな。というか、そのレベルの大金星は、運を支配して実現できるものなのか?宿澤という人物をまったく知らなか…

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治 歴史に「もし」は禁句だが、それでもやはり思ってしまう。「もし大久保が暗殺されていなければ?」おそらく日本の歴史は大きく変わっていただろうし、アジアの中での立ち位置も、世界の中でのポジシ…

『評伝レヴィナス - 生と痕跡』サロモン・マルカ

『評伝レヴィナス - 生と痕跡』サロモン・マルカ エマニュエル・レヴィナスには、近づいたことがない。本人はユダヤ思想とガチで向き合い、かつ第二次大戦を通しユダヤ人としての生を強烈に体験してて、つまり土台の部分で、俺には理解しえないところがデカ…

『影の権力者 - 内閣官房長官菅義偉』松田賢弥

『影の権力者 - 内閣官房長官菅義偉』松田賢弥 しまった、またもや現役の政治家に関する本だ。だが安心してほしい。この本では、政治家 菅義偉に迫れていないのだ。政治ジャーナリスト松田賢弥としては、痛恨のミスであるように思える。レビューもさんざんだ…

『古田織部 - 美の革命を起こした武家茶人』諏訪勝則

『古田織部 - 美の革命を起こした武家茶人』諏訪勝則 武将にして茶人である、古田織部の本。多くの人がそうであるように、俺も山田芳裕のマンガ『へうげもの』経由で古田織部のことを知った。名器は名器でも、茶道具の方の名器で興奮してしまう、あの変態だ…

『解読ジェフリー・バワの建築 - スリランカのアニミズム・モダン』岩本弘光

『解読ジェフリー・バワの建築 - スリランカの「アニミズム・モダン」』岩本弘光 インフィニティ温泉は大人気だ。水面と水平線が一体化し、まるで無限(インフィニティ)に湯船が広っているかのような感覚を味わえる。この原型インフィニティ・エッジ・プー…

『フレデリック・ダグラス自伝 - アメリカの奴隷制を生きる』フレデリック・ダグラス

『フレデリック・ダグラス自伝 - アメリカの奴隷制を生きる』フレデリック・ダグラス 著者のフレデリック・ダグラスは、19世紀のアメリカで奴隷制廃止論を訴えた野郎で、「アナコスティアのライオン」と呼ばれた男だ。奴隷が文字を学ぶことさえ違法(!)と…

『愛犬たちが見たリヒャルト・ワーグナー』ケルスティン・デッカー

『愛犬たちが見たリヒャルト・ワーグナー』ケルスティン・デッカー ふつうにワーグナーの評伝を書いてよさそうなのに、なぜかワンちゃん目線から語られる本書。まるで「ワーグナーがワーグナーたりえたのは、犬たちのおかげだった」と言わんばかりだ。著者の…

『フロイトの〈夢〉 - 精神分析の誕生』秋吉良人

『フロイトの〈夢〉 - 精神分析の誕生』秋吉良人 フロイトの仕事をオカルト文学として退けるのは簡単だ。「エビデンスは何?」「データにして見える化してもらえます?」「おクスリ出しときますねー」だが、フロイトの仕事の真価はそんなところにあるのでは…

『デイヴィッド・ヒューム - 哲学から歴史へ』ニコラス・フィリップソン

『デイヴィッド・ヒューム - 哲学から歴史へ』ニコラス・フィリップソン どっかで見た名前だと思ったら、『アダム・スミスとその時代』を書いた奴じゃねーの。なるほどね、スミスつながりでデイヴィッド・ヒュームか。よほどこの時代が好きなんだな、ニコラ…

『僕はカンディンスキー』アナベル・ハワード

『僕はカンディンスキー』アナベル・ハワード パイインターナショナルから出てる「芸術家たちの素顔」シリーズの一冊。このシリーズは軽すぎず、重すぎず、なかなか良い。興味がないわけではないものの、例えば300ページ前後もあるような単著を読む気はしな…

『押井言論 2012-2015』 押井守

『押井言論 2012-2015』 押井守 ページ数がおかしい(※656ページ)と思ったら、メルマガから引っ張ってきてるのか。納得。それにしてもメルマガのタイトルが最高だ。「世界の半分を怒らせる」というんだから。つまり「賛否両論まっぷたつ」ってことだろ? 難…

『鬼谷子 - 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』 高橋健太郎

『鬼谷子 - 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』 高橋健太郎 この本はずいぶん題名で損してそうだ。何しろ「鬼谷子」なので、芸能人の「鬼奴(おにやっこ)」によるタレント本と勘違いされそうだからだ。もちろん、まったく関係ない。鬼谷子…

『愚か者』 松田公太

『愚か者』 松田公太 現役の政治家が書いた本は、あまり紹介したくない。そういうのとは距離を置きたいからだ。ただし松田公太は、政治家としてよりか、人間としてのキャラが立ってるので、自分ルールに反して取り上げることにした。なお、政治的な主義主張…

『政治思想家としてのグルントヴィ』オヴェ・コースゴー

『政治思想家としてのグルントヴィ』オヴェ・コースゴー どこの国にも巨人と呼べる歴史上の人物がいるものだ。名前を聞いたこともないような、このデンマークのニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィもまた、その一人と言えるだろう。知られざる建…