BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

歴史/地理

『トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」』山本紀夫

『トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」』山本紀夫 『トウガラシ讃歌』、『ジャガイモとインカ帝国』、『インカの末裔たち』などの著作がある山本紀夫によるトウガラシの新書。中南米を原産地とするトウガラシに関する書籍なので、その仕事のブレな…

『魔の地ニューギニアで戦えり』植松仁作

『魔の地ニューギニアで戦えり』植松仁作 ニューギニアといえば南半球である。今では信じられないことに、旧日本軍はそんなところまで出向いていた。ただ単純に驚く。それもほぼ行き当たりばったりの計画で、現地で何とかするタイプのブラックな任務。大局観…

『インフォグラフィックスの潮流 - 情報と図解の近代史』永原康史

『インフォグラフィックスの潮流 - 情報と図解の近代史』永原康史 インフォグラフィックスは見ていて目に楽しい。美しいインフォグラフィックスは、あたかも高度に洗練された抽象画のよう。鮮やかな色彩と、無駄のないシャープな輪郭、そして明確な伝達意志…

『トンブクトゥ - 交界都市の歴史と現在』応地利明

『トンブクトゥ - 交界都市の歴史と現在』応地利明 イブン・バットゥータにより、「黄金の都」として知られるようになったトンブクトゥ。かつてはサハラ交易で栄え、アフリカの交易上重要なポジションを占めた。今では世界遺産に登録されてるが、なかなか日…

『リトヴィーノフ - ナチスに抗したソ連外交官』斎藤治子

『リトヴィーノフ - ナチスに抗したソ連外交官』斎藤治子 旧ソ連の外交官マクシム・リトヴィノフの激アツな人生を辿った一冊。リトヴィーノフのことは、まったく知らなかったが、ちょっとプロフィールを見ただけでも、かなり波乱万丈な一生だ。この本では、…

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子

『「かぐや姫」誕生の謎 - 渡来の王女と道真の祟り』孫崎紀子 『竹取物語』の「かぐや姫」誕生の謎に迫る本。奈良時代に書かれた『日本書紀』を手掛かりに、中世ペルシア、飛鳥遺跡、神社の祭神、そして最古の『竹取物語』写本まで読み解き、「かぐや姫」が…

『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ

『プラハの墓地』ウンベルト・エーコ 「ちょっと待って。ウンベルト・エーコの本って、それノンフィクションじゃなくない?」というツッコミがありそうだが、まったくその通り。小説です。だがエーコの小説は、そこいらの半端なノンフィクションよりか、実は…

『阪神タイガース「黒歴史」』平井隆司

『阪神タイガース「黒歴史」』平井隆司 国内外でいかなる出来事があろうとも、トップに阪神タイガース関係の記事を持ってくる、信念のブレない新聞デイリースポーツ。そのデイリーで虎番をしていた著者が阪神タイガースの黒歴史をまとめたもの、それがこの一…

『幕末に海を渡った養蚕書』竹田敏ほか

『幕末に海を渡った養蚕書』竹田敏ほか 上垣守国が1802年に書いた養蚕書『養蚕秘録』が、シーボルトによってオランダを経由し、フランスで翻訳され、後にイタリア語にも訳された経緯と時代背景を追った本。ちなみにフランスでは19世紀後半から養蚕業が衰退、…

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司 知ってるようで知らないことは、案外多い。たとえば、「標準語のクリエイターは誰?」と質問されて、すぐに答えられる奴は少ないだろう。俺も知らなかった。そもそも標準語は、誰かがリーダーシップを発…

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治 歴史に「もし」は禁句だが、それでもやはり思ってしまう。「もし大久保が暗殺されていなければ?」おそらく日本の歴史は大きく変わっていただろうし、アジアの中での立ち位置も、世界の中でのポジシ…

『異端思想の500年 - グローバル思考への挑戦』大津真作

『異端思想の500年 - グローバル思考への挑戦』大津真作 京都大学学術出版会から異端思想の本。うん、しっくり来るな。むしろ、京大から王道的な思想書が出てきたら困惑すると思う。著者の経歴も、物理学科を卒業して、経済学部につとめて、西欧社会思想史が…

『ジャワの芸能ワヤン - その物語世界』福岡まどか

『ジャワの芸能ワヤン - その物語世界』福岡まどか インドネシアのジャワ島といえば、ジャワカレーとジャワ原人とガムランくらいしか思いつかないが、人形をつかった伝統的な影絵芝居ワヤン・クリ(Wayang Kulit)も盛んだという。ググってみたところ、「そ…

『世界を動かす少数民族』高やすはる

『世界を動かす少数民族』高やすはる 世界を動かすような少数民族が40も存在するか? 盛ってる気がするぞ。しかし、いくらか誇張があるにせよ、そういった少数民族の話が聞けるんなら耳を傾けよう。だいたいにおいて少数民族は、世界に動かされる側だからな…

『仏像再興 - 仏像修復をめぐる日々』牧野隆夫

『仏像再興 - 仏像修復をめぐる日々』牧野隆夫 学術的な価値、あるいは骨董的な価値といった、わりあい客観的な要素を持つ仏像は、その重要性を説明しやすい。いわく「有名な仏師が彫った」、「当時の革新的な技術が使われている」、「名のある個人だれそれ…

『世界史の中の安倍政権』南塚信吾/小谷汪之/木畑洋一

『世界史の中の安倍政権』南塚信吾/小谷汪之/木畑洋一 安倍政権については色いろと言われているが、それを支持する奴、支持しない奴、どちらの言葉にもパンチがない。こんな時に賢者はどうするか? 歴史に学ぶわけだ。この本では、三人の歴史家が、世界史…

『BIS国際決済銀行 - 隠された歴史』アダム・レボー

『BIS国際決済銀行 - 隠された歴史』アダム・レボー BIS規制(バーゼル合意)で耳にしたことがあるはずのBIS(ビーアイエス)の本。ときおりBIS規制の変更で、世界中の銀行が右往左往することになる、あの謎の組織だ。スタッフは600人ほどで、その絶大な影響…

『美の考古学 - 古代人は何に魅せられてきたか』松木武彦

『美の考古学 - 古代人は何に魅せられてきたか』松木武彦 学校でまなぶ美術史といえば、バロック、ゴシック、ルネサンスといった、超ローカルでニッチな西洋美術史に集中しがちだ。たかだか数百年のとこだけ拾って、偏執狂のように些細なちがいをアレコレす…

『フレデリック・ダグラス自伝 - アメリカの奴隷制を生きる』フレデリック・ダグラス

『フレデリック・ダグラス自伝 - アメリカの奴隷制を生きる』フレデリック・ダグラス 著者のフレデリック・ダグラスは、19世紀のアメリカで奴隷制廃止論を訴えた野郎で、「アナコスティアのライオン」と呼ばれた男だ。奴隷が文字を学ぶことさえ違法(!)と…

『ダッハウ強制収容所自由通り』 エドモン・ミシュレ

『ダッハウ強制収容所自由通り』 エドモン・ミシュレ 第二次世界大戦を生きた人間の話には、「冗談だろ、それ(絶句)」というのが多く、本書もそれに属するものだろう。よく知らなかったので、とりあえずダッハウ強制収容所を調べてみたら、なるほど、ひど…

『メッカ巡礼記1 - 旅の出会いに関する情報の備忘録』 イブン・ジュバイル

『メッカ巡礼記1 - 旅の出会いに関する情報の備忘録』 イブン・ジュバイル これは現代のメッカ巡礼記ではない。12世紀の旅ブログと考えればいい。あるいは、ことりっぷとか、地球の歩き方みたいなもん。著者のイブン・ジュバイルは、当時すごい人気のブロガ…

『鬼谷子 - 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』 高橋健太郎

『鬼谷子 - 100%安全圏から、自分より強い者を言葉で動かす技術』 高橋健太郎 この本はずいぶん題名で損してそうだ。何しろ「鬼谷子」なので、芸能人の「鬼奴(おにやっこ)」によるタレント本と勘違いされそうだからだ。もちろん、まったく関係ない。鬼谷子…

『政治思想家としてのグルントヴィ』オヴェ・コースゴー

『政治思想家としてのグルントヴィ』オヴェ・コースゴー どこの国にも巨人と呼べる歴史上の人物がいるものだ。名前を聞いたこともないような、このデンマークのニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィもまた、その一人と言えるだろう。知られざる建…

『チェチェン - 平和定着の挫折と紛争再発の複合的メカニズム』富樫耕介

『チェチェン - 平和定着の挫折と紛争再発の複合的メカニズム』富樫耕介 飽きもせず世界各地で紛争が起きてるので、そろそろ誰か「紛争のデザインパターン」みたいな本を書いてくれないか。俺が読みたい。「和平のアンチパターン」でもいい。これはチェチェ…

『Moving Plants』 渡邊耕一

『Moving Plants』渡邊耕一 世の中には「なぜそれをライフワークに?」と理解しかねる趣味がある。これはその産物。シーボルトが日本から世界に広めた侵略植物イタドリ(Fallopia japonicaもしくはJapanese knotweed)の奇ッ怪な写真集だ。ちなみにイタドリ…

『玩具とデザイン - アトリエ ニキティキとトイメーカーの歴史』 上條桂子/アトリエ ニキティキ

『玩具とデザイン - アトリエ ニキティキとトイメーカーの歴史』上條桂子/アトリエ ニキティキ 木製の玩具は、「かわいらしいデザイン」だの、「木のぬくもり」だの、そういった方面から評価されがちだ。でも俺の好みはそうじゃなくて、シンプルな色と、シ…

『スウェーデン・モデル - グローバリゼーション・揺らぎ・挑戦』 岡澤憲芙/斉藤弥生

『スウェーデン・モデル - グローバリゼーション・揺らぎ・挑戦』岡澤憲芙/斉藤弥生 言われてみれば、スウェーデンは実験国家だ。そのわりに実験国家にありがちな、セカセカしたところがないのは、北国ならではの思慮深さのあらわれか。 二〇〇年間戦争を起…

『スペインとスペイン人 - スペイン神話の解体』 フアン・ゴイティソロ

『スペインとスペイン人 - スペイン神話の解体』フアン・ゴイティソロ 裕福な家庭の長男としてバルセロナに生まれたものの、フランコ時代に自著が出版禁止にされ、パリに亡命した作家フアン・ゴイティソロによるスペイン論。本人はオクタビオ・パス賞、セル…

『幕末維新を動かした8人の外国人』 小島英記

『幕末維新を動かした8人の外国人』小島英記 NHKの大河ドラマといえば、日本史を動かした奴が主人公になるのでお馴染みだ。ここでひとつ、誰もまだ見たことがなくて、すごく見てみたくなる大河ドラマを提案したい。日本史を動かした重要人物ならオッケーとい…

『キューバ』 伊藤千尋

『キューバ』伊藤千尋 アメリカが国交を回復させたので、このタイミングでキューバ本を読むのもいいかもしれない。著者は中南米の国々についての著作の多い伊藤千尋。クオリティ的に全然問題ないだろう。 米国は武力と経済制裁でキューバをつぶそうとしたが…