『うるうのもり』小林賢太郎
『うるうのもり』小林賢太郎
ラーメンズの小林賢太郎といえば、ほころびを見つけるのがウマい。あるいは、ほころばせるのがウマい。すなわち、理詰めで話を作っていって、それが破綻するところを上手に見せてくれる。稀有な才能。そのセンスは絵本でも健在だ。
「うるう年」があれば、「うるう秒」もあるわけで、それなら「うるう人」が存在してもおかしくない(錯乱)。言葉の上では何も間違っていなくて正しい。だがやはり間違っている。その崩れたバランスを保ちつつ、物語はスピンする。しかし崩れたバランスは、最終的には崩れた状態を保っていられず、やがてスピンは終わってしまう。その均衡に美を、ないしは崩れる姿に哀しみを見るだろう。
うるう年のうるう日のように、「余りの1」が世界のバランスをとることがある。人間もそう。
世界でたったひとりの余った人間「うるうびと」。彼が少年と友達になれなかった本当の理由とは。おかしくて、美しくて、少し悲しい、ある友情の物語。
- 作者: 小林賢太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る