『何かのためではない、特別なこと』平川克美
『何かのためではない、特別なこと』平川克美
あーもう、紹介文からしてカッコいいし、その上でタイトルを読むとさらに味わい深い。本書は『復路の哲学』の続編的な位置づけになるのかな。さて、例えばダラダラとネットに接続してるとき、「即効性があり、有用で、刺激的なもの」を必死に探し、そればかりを追っているはずなのに、オフラインに戻ったときの、あの充実感のなさ。考えれば、すごい謎だ。
なぜならネット徘徊してる時は、一瞬たりとも退屈な時間をすごしていないはずで、ずっと有用な何かに接してきたはずなのに、ほとんどまったく何の満足感も残っていない。となれば、その時間は一体なにをして過ごしてきたのか。逆に、何をしたら充実感を手にできるのか。
ヒントの一端は、この本に書かれている。しかし、どっぷり今の潮流に染まった人間は、そのヒントを見落とすだろうし、「これがヒントです」と示されたところで、理解できないだろう。嗚呼。
本書は「即効性があり、有用で、刺激的なもの」ばかりを追い求めるようになった現代に対する、ささやかな抵抗である。
死を迎えるという自然の摂理の側から、世の中を見直してみると、それ以前とは全く違った光景が視野に入ってきます。それまで、重要だと思っていたことが、実はとるに足りないことであり、どうでもいいと思っていた儀礼や習慣が、人類史的な意味を持つ大切なことであることに気付かされるのです。
- 作者: 平川克美
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 単行本
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