『インド人の「力」』山下博司
『インド人の「力」』山下博司
このところインド関係の書籍を多く目にする。やはり中国の次はインドなんだろう。著者の山下は、長年インドに住み、インド哲学、思想書をいくつも出しており、この方面の書き手として信頼できる。
その山下が注目するインド人の強みは、一般に注目されがちな数学的センスや英語力、ITではない。多様な意見をまとめ上げる調整能力だ。一瞬、意外に思ってしまうが、よくよく考えてみれば自然なことだ。自己主張の強い連中が集まれば集まるほど、そいつらをうまく束ねるための調整力が求められる。その流れで必然、傾聴の姿勢が磨かれる。
やたらリーダーシップに価値が置かれがちな昨今では、意見の吸い上げや調整能力がさほど注目されない。不当に軽んじられている気さえする。実際、すべてのCEOがトップダウン型というわけでもないのに。ここらでインド人に学ぶのもいいだろう。
多様な価値観の混在する現代社会でいま必要とされているのは、「対話・融和」的な態度でしょう。
多くの人の話に耳を傾け、納得してもらえる答えを出すように努めるのです。これはインドという多言語・多文化複合社会に生きる人びとが生み出した智慧の産物です。
- 作者: 山下博司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/02/17
- メディア: 新書
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