サイエンス
『医薬データ解析のためのベイズ統計学』エマニュエル・ルサッフル/アンドリュー・B・ローソン データ解析、機械学習の文脈から、急速に注目を集めるようになったベイズ統計。去年あたりから雨後のタケノコのごとく、入門書がバンバン出てる。出版社の思惑…
『孤高のハンセン病医師 - 小笠原登「日記」を読む』藤野豊 世にトンデモ学説はいくつもあるが、その中でもっとも下劣で愚かしいものは、差別と偏見を助長するために存在するトンデモ学説だ。癩予防法が施行されていた時代における、ハンセン病患者の強制隔…
『がん哲学外来へようこそ』樋野興夫 順天堂大学がん哲学外来の案内書。がん治療と言えば、外科手術、薬物療法、放射線治療あたりがメジャーで、哲学外来は飛び抜けて異色だ。しかし、生死に関わる病であるガンともなれば、哲学外来があっても不思議ではない…
『刃物の下では不死身の生きもの! プラナリア実験観察図鑑』宮崎武史 見た目が微妙にキモいプラナリアだが、そこそこ世の中には受け入れられていて、それなりにファンもいるようだ。これはその写真集と考えればいいかもしれない。いちおう「実験観察図鑑」…
『国際バカロレアの数学 - 世界標準の高校数学とは』馬場博史 「バカロレアは次元が低すぎる」という批判は、批判のようでいて、批判になっていないと思う。あの次元の低さは、「未成年は勉強以外のことにもリソースをしっかり割くべき」、「それほど学力の…
『鳥ってすごい!』樋口広芳 日曜は食後に『ダーウィンが来た!』を見ることが多いが、家の連中はこの番組のおもしろさがまったく分からないようで、「そんな動物番組の何がいいの?」とまで言われる始末。すっげー面白いのになー。とりわけバイオミメティク…
『日本を救う数式』柳谷晃 タイトルの気概がすばらしい。実際に日本を救える数式が存在するのか知らないが、そんなのに関係なく心意気が上等。著者の柳谷晃は、かつて『情熱大陸』に出たことがあり、なかなかの変人だったのも好印象。目の奥で笑いながら、世…
『アインシュタインとヒトラーの科学者 - ノーベル賞学者レーナルトはなぜナチスと行動を共にしたのか』ブルース・J・ヒルマン/ビルギット・エルトル=ヴァグナー/ベルント・C・ヴァグナー ヒトラー側についたノーベル賞物理学者フィリップ・レーナルトの…
『ひまわり8号 - 気象衛星講座』伊東譲司/西村修司/田中武夫/岡本幸三 天気予報でおなじみの気象衛星ひまわり。あれだけよく耳にするのに、実際のところ何をやってるのか、まったく知らない。ひまわり8号リアルタイムWebからスペックの高さは垣間見えるが…
『生き物と向き合う仕事』田向健一 一般に獣医というと、「生き物にやさしいまなざしで接する、ハートウォーミングな職業人」といった印象を持ちがちだ。だが、本作ではその印象をのっけから破壊する。「動物を救うことが獣医学の真理ではない。獣医学は、た…
『ラマヌジャン - ゼータ関数論文集』黒川信重/小山信也 『ラマヌジャンζの衝撃』の黒川信重と、『素数からゼータへ、そしてカオスへ』の小山信也による、豪華なラマヌジャン本。黒川と小山はよく一緒に仕事してて、ラマヌジャンが取り結んだ縁だなー、と思…
『黄砂にいどむ - 緑の高原をめざして』高橋秀雄 砂漠地帯の緑化はロマンだ。マスコミは時おり、「この地帯の緑化が成功しました。ご覧ください!」などとニュースで報道するが、実際は数年も手入れを放置すれば、もとの砂漠に戻ってしまう。そうそう簡単に…
『虫たちと作った 世界に一つだけのレモン』河合浩樹 無農薬栽培の苦労話は数多いが、このレモン栽培では虫に注目したところが、とりわけ面白い。理にかなっているし、それでいて一筋縄ではいかないからだ。植物が生きているように、昆虫も生きていて、それ…
『文化進化論 - ダーウィン進化論は文化を説明できるか』アレックス・メスーディ すっげー単純なレベルに話を落として悪いけど、例えばインドは牛を食べない文化、イスラムは豚を食べない文化、ヨーロッパは鯨を食べない文化としてあるわけだろ? ダーウィン…
『Sparkによる実践データ解析 - 大規模データのための機械学習事例集』Sandy Ryza/Uri Laserson/Sean Owen/Josh Wills ビッグデータという言葉が2011年末に登場してから、ずいぶん経つが、ふつうに暮らしてる分には、それを使って何かしよう、という気に…
『タヌキ学入門 - かちかち山から3.11まで 身近な野生動物の意外な素顔』高槻成紀 帰り道、住宅街の物陰から、ひょいとネコが出てくる。だが、ネコにしては歩き方がおかしい。しっぽも太い。なんだ、タヌキじゃないか。という程度には、タヌキに化かされたこ…
『ねころんで読めるてんかん診療 - 発作ゼロ・副作用ゼロ・不安ゼロ!』中里信和 親しみやすすぎる表紙とタイトルから伝わってくる、圧倒的な自信と実力。ハンパな医師には無理な芸当だ。それもそのはず、著者の中里は、大学病院に国内で初めて「てんかん科…
『気候を人工的に操作する - 地球温暖化に挑むジオエンジニアリング』水谷広 サブタイトルに「地球温暖化に挑む!」とあるが、紹介されてる技術を見ると、「小惑星を砕いて宇宙にばらまく」、「宇宙からレーザーを照射」、「火山を人工的に噴火させる」等と…
『触楽入門』仲谷正史/筧康明/三原聡一郎/南澤孝太 一般に「五感」とざっくり言うが、俺はまったく信じていない。例えば、平衡感覚や空腹感は、五感のどれに分類されるんだ? 「触覚じゃね?」とするなら、ずいぶん乱暴すぎる話だろ。感覚の数はもっと多…
『曝された生』アドリアナ・ペトリーナ チェルノブイリ本はたくさん出てるが、これは人類学的アプローチを仕掛けてるレアな一冊。著者はペンシルベニア大学で人類学を教えているアドリアナ・ペトリーナ。2006年にニュー・ミレニアム賞(New Millenium Award…
『教えてゲッチョ先生! - 昆虫のハテナ』盛口満 盛口満は多くの本を出しているが、どれでもいいから適当に一冊を手に取ると、「この人、ガチだわ……」というのが分かる。さかなクンに近い。無類の生物好き。ほんと見境がない。そして博学でありながら、スタ…
『ユークリッドと彼の現代のライバルたち』ルイス・キャロル ルイス・キャロル(本名チャールズ・ドジソン)は、『不思議の国のアリス』を書いた野郎としてよく知られているが、実は数学者でもある。オックスフォードで数学を教えていたというから立派なもの…
『Moving Plants』渡邊耕一 世の中には「なぜそれをライフワークに?」と理解しかねる趣味がある。これはその産物。シーボルトが日本から世界に広めた侵略植物イタドリ(Fallopia japonicaもしくはJapanese knotweed)の奇ッ怪な写真集だ。ちなみにイタドリ…
『とんでもなくおもしろい宇宙』柴田一成 それではここで宇宙物理学者に登場してもらおう。太陽研究の第一人者でもある柴田一成だ。一流の学者にありがちな、ぶっ飛び加減が最高だぜ。喜多郎の『古事記』とコラボした『古事記と宇宙』とかな! 何だよ、その…
『果樹 高品質多収の樹形とせん定 - 光合成を高める枝づくり・葉づくり』高橋国昭 世に理論物理学者がいるのなら、理論農学者がいても不思議ではない。いや、むしろ存在すべきだ。そして、これはそういった類いの本だ。それでいて実践的でもある。以下の紹介…
『層とホモロジー代数』志甫淳 著書の志甫淳は、斎藤毅の弟子。これが初の著作となるが、力強い紹介文から名著の雰囲気が香り立つ。だが同時に、読んでも絶対に分からないであろうとも確信する。ホモロジー、コホモロジー関係は、かみくだいて説明すると、わ…
『研究者としてうまくやっていくには - 組織の力を研究に活かす』長谷川修司 名門ブルーバックスから世渡りの本が出るとは、これは一体どういうことだ(困惑)。ネタとしては面白いが、悲しい気分になってくる。それだけ研究職の現状は厳しいってことか。 学…
『科学者、あたりまえを疑う』佐藤文隆 シンプルにおもしろそう。表紙イラスト太陽の脱力感がすばらしい。著者は仁科記念賞を受賞してる理論物理学者だが、この脱力感で仕事してたら最高すぎる。科学エッセイ。 科学の本質を見つめて、いま起きている社会の…
『救急外来 ただいま診断中!』坂本壮 おおむね好評価の本書レビューをチェックしてみると、「医者もテンプレ対応してるのか!」という新鮮な驚きを味わえる。が、考えてみたら当然で、救急外来で毎度ゼロベース診断していたら、場合によっては時間切れで患…
『意識と無意識のあいだ - 「ぼんやり」したとき脳で起きていること』マイケル・コーバリス 『進化心理学が探る言語の起源』に『からだの左右と心理』など、ヘンな角度から心理学に向き合っているマイケル・コーバリス。その新作は、やっぱりヘンな感じだ。…