BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『マルクスと贋金づくりたち - 貨幣の価値を変えよ』大黒弘慈

マルクスと贋金づくりたち - 貨幣の価値を変えよ』大黒弘慈

「貨幣の価値を変えよ」シリーズの完結編。大黒が渾身のちからを込めて書いたであろう、このシリーズだが、まったく話題になってねー! 岩波から出てるし、柄谷行人が推薦してるし、大澤真幸がコメント寄せてるし、タイトルもキャッチーなのに! 大黒が可哀想になってくるくらいの無反応っぷり(大黒がどんな人物なのか知らないが)。俺が大黒だったら死にたくなるな。

しかし紹介文に見え隠れする「お勉強しました!」、「自説を披露したいです!」アピールが、普通にウザいと言えばウザい。なんかこう、時代とズレてる感じもする。もうひとヒネり欲しかった。いっそ「俺が現代のディオゲネスだ!」とか開き直って、ゴリゴリ無茶な理屈を振り回した方が良かったんじゃないか。岩波の担当者や柄谷にイヤな顔をされたとしても。

二冊の本に投じた大黒の熱量は、ハンパなものではなかったはずだ。鮮やかなリベンジを期待する。だがその前に、研究者として生きたいのか、批評家として生きたいのか、その決断をしなければならないだろう。どちらでもいいので突き抜けてほしい。「お前自身の価値を変えよ」ってヤツだ。

貨幣や国家に代わりうる価値観・社会像をどう構想していけばよいか。哲学者ディオゲネスへの神託「貨幣の価値を変えよ」の豊かな意味が開示される。