BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『医薬データ解析のためのベイズ統計学』エマニュエル・ルサッフル/アンドリュー・B・ローソン

『医薬データ解析のためのベイズ統計学』エマニュエル・ルサッフル/アンドリュー・B・ローソン

データ解析、機械学習の文脈から、急速に注目を集めるようになったベイズ統計。去年あたりから雨後のタケノコのごとく、入門書がバンバン出てる。出版社の思惑と、読者ニーズが、めずらしく一致してるんだろう。

この本は、医薬データ解析に特化したベイズ統計本で、ひととおり入門から応用まで押さえてある。医薬方面では、今後こういったトレンドは続くだろうと予想される。いや、時代が逆回転することは、まずないだろうとさえ思われる。また、その流れは多方面に及び、その各々においてもまた、一種のパラダイムシフトが生じるはずだ。つまり、ベイズ統計以前の時代に戻ることはない。今のうちに先取りしておきたい分野。

ベイズ統計学の入門基礎から、MCMCなどを含めた最近の計算法,モデル化や変数選択法など、そして、バイオアッセイ、測定誤差、生存解析、画像解析などの専門的トピックにわたり、ベイズ統計の手法を,医学薬学での豊富な例を用いて解説している。

医薬データ解析のためのベイズ統計学

医薬データ解析のためのベイズ統計学

『バイエルの謎 - 日本文化になった教則本』安田寛

『バイエルの謎 - 日本文化になった教則本』安田寛

「とりあえずビール」と同じように、ピアノを始めるとなると、「まずはバイエル」というスタンダードが日本には定着している。その一方で、なぜビールなのか、なぜバイエルなのか、そもそもビールとは何か、バイエルとは何か? という探求は、意外にもなされていなかった。この本では、そのビールならぬバイエルのルーツを探す紀行だ。

ちなみに最近では、「とりあえずビール」と注文する人が減っているが、やはりそれと同じように「まずはバイエル」という流れも崩れつつあるようで、「バーナムはじめました」「ハノンから」という動きが大きくなっているという。そのうち「若者のバイエル離れ」などと言われる日が来るのかもしれない。

誰もが知る初級ピアノ教則本として、明治以来100年以上、日本人の音楽教育の基礎を担った「バイエル」。でも、その作者の経歴はなぜか誰も知らない。

疑問に感じた著者はチェルニー偽名説、ペンネーム説など通説を再検討する一方、各国のオリジナル初版を手がかりに、そのルーツを探す旅に出た。遠く異郷で出会った驚きの新事実とは? 魅惑の音楽紀行が始まる!

バイエルの謎: 日本文化になった教則本 (新潮文庫)

バイエルの謎: 日本文化になった教則本 (新潮文庫)

『進化系! 筋肉男子の栄養学』竹並恵里

『進化系! 筋肉男子の栄養学』竹並恵里

筋肉男子といえば、ササミを連想してしまう。そして、ササミといえば鶏で、マッチョすぎる男子はシャモを思い起こさせる。軍鶏は、ちょっとニワトリとしてやり過ぎな感じで、「ブロイラーをやめたいのは分かるが、それなら健康的な地鶏あたりでストップしとけばいいのに」と感じてしまうわけだ。いや、この文章、だいぶ意味が分からないな。とりあえず訴えたいのは、マッチョすぎる筋肉男子は、見た目のバランスがシャモ的におかしい。おそらくは、そのマッチョの食生活も。

さて本書は、これまでの筋トレ本にあったような、タンパク質偏重主義を脱し、ヘルシーでありつつ筋肉質なバディをつくるための栄養学を説いたもの。女子目線で書かれた紹介文が、いささか謎だが、理念には賛同したい。生涯現役(意味深)。

結局のところ、女子が求めるのは、今だけのマッチョではなく、生涯現役のヘルシーマッチョなんだから。脱「タンパク質偏重」主義。

進化系!筋肉男子の栄養学

進化系!筋肉男子の栄養学

『インフォグラフィックスの潮流 - 情報と図解の近代史』永原康史

インフォグラフィックスの潮流 - 情報と図解の近代史』永原康史

インフォグラフィックスは見ていて目に楽しい。美しいインフォグラフィックスは、あたかも高度に洗練された抽象画のよう。鮮やかな色彩と、無駄のないシャープな輪郭、そして明確な伝達意志が感じられるインフォグラフィックスを前にすると、わけもなく感動してしまう。

この本は、そんなインフォグラフィックスの歴史を、複数の観点から見直し、その本質に迫ろうとしたもの。インフォグラフィックスの本はいくつもあるが、たいていは「作品集」の色合いが濃く、この手のアプローチは珍しい。手元にあれば重宝するだろう。著者はグラフィックデザイナーで、アートディレクターの永原康史

本書はインフォグラフィックの歴史をマップ、統計、図解、関係、コードといった観点から探求し、インフォグラフィックを本質的に理解する視点を提示するとともに、今後の視覚情報のあり方を考える機会を提供します。

『俺たち妊活部 - 「パパになりたい!」男たち101人の本音』村橋ゴロー

『俺たち妊活部 - 「パパになりたい!」男たち101人の本音』村橋ゴロー

見ての通り妊活本である。妊活とは妊娠活動の略で、妊娠を目的とした行為および対策に取り組む活動のことであり、笑ってはいけない。当事者たちにとって不妊は深刻な問題で、しばしば不和やウツの原因となる。あまり他人にも相談できない。パートナーの性的倒錯の方がまだ相談しやすい(はずだ)。

この本は、男性サイドの妊活本で、やたらレビューは高評価。「泣けた」「救われた」「感謝したい」といった言葉が並ぶ。本書の読者は、おそらく中年の男女が大半であるはずだが、そんな彼らが「泣けた」だの書いているのだから、よほどシリアスに追い込まれていたんだろう(中年になると、涙もろくなるという側面もあるが)。その辺りのメンタルが一番気になる。

村橋ゴローとその妻「りえちゃん」との不妊治療奮闘記とともに、妊活を体験した男性たちを取材。僕と妊活部員100人の本音・涙と笑いのエピソードが満載。

俺たち妊活部―「パパになりたい! 」男たち101人の本音

俺たち妊活部―「パパになりたい! 」男たち101人の本音