『自転車で見た三陸大津波 - 防潮堤をたどる旅』武内孝夫
『自転車で見た三陸大津波 - 防潮堤をたどる旅』武内孝夫
三陸大津波で被害を受けた地域を自転車で走った記録。青森は八戸市から宮城の仙台市まで。東日本大震災の一部エリアなのが疑問に思うだろうが、地図を見れば(あっ……)と気づくだろう。そう、「防潮堤をたどる旅」である本作では、走れない地域があるのだ。それはこの本が間接的に描こうとした、もうひとつのテーマかもしれない。
テレビや新聞などのマスコミでは、いわゆる「絵になる光景」が選好され、実際とは異なるイメージを発信しがちだ。その点、自転車での紀行の場合、身体に蓄積された印象をなるべく等身大で表現しようとする作用により、ズレが大幅に矯正されているものと考えられる。またチャリだからこそ見えてくるものも間違いなくある。東北の現在を知る、よい手掛かりになるのではないか。
さて、俺の知り合いに東北人はいないが、東北の人たちが無口で我慢強いというのは、おそらくマジだと思う。そろそろまた、あの日が近づいてくるが、いまだに現地から声らしき声は聞こえない。それをいいことに、東北以外の連中は好き勝手なことを言い、無神経なことをし、それどころか東北のことを考えもしないで暮らしている。非常に申し訳なく思う。
東日本大震災で大津波に襲われた三陸海岸。その沿岸の道を自転車で辿り通した紀行。自転車目線だからこそ見えてくる世界がある。
- 作者: 武内孝夫
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2016/02/19
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る