『鮎川義介- 日産コンツェルンを作った男』堀雅昭
『鮎川義介- 日産コンツェルンを作った男』堀雅昭
鮎川義介による「事業は創作であり、自分は一個の創作家である」という言葉は、その波乱の生涯を見ると、深く納得させられる。たしかに創作家でもなければ出来ないような、非常に旺盛な事業展開だ。
こういう人物の場合、もはや途中から事業は「金儲けのための手段」ではなくなっていて、あふれ出るアイディアを叩きつける、画家にとっての絵筆のようなものだと思う。そして、その結果として鮎川コレクション(日産コンツェルン)が後世に残された、といった具合だ。社風は画風と考えてみると、さらに分かりやすいと思う。そういった視点から書かれた、幾多の経営者の紹介書があってもよさそうだな(自分が読んでみたい)。
生涯を通じて、大衆を視座にすえて行動したことに光をあて、実業家・鮎川の実像に迫った労作。
井上馨の富国主義を受け継いで、戦前は満洲産業界を主導し、戦後は岸信介とともに高度経済成長を支えて中小企業の育成に努めた鮎川義介、その波乱の生涯。
- 作者: 堀雅昭
- 出版社/メーカー: 弦書房
- 発売日: 2016/02/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『負ける人は無駄な練習をする - 卓球王 勝者のメンタリティー』水谷隼
『負ける人は無駄な練習をする - 卓球王 勝者のメンタリティー』水谷隼
卓球界の本田圭佑、あるいは錦織圭、もしくは松山英樹。そんな水谷隼だからこそ書ける本。よほどのメンタルを持っていないと、このタイトル(負ける人は無駄な練習をする)は付けられない。国内男子では圧倒的な実力を誇り、全日本卓球大会シングルスでは3年連続8度目の優勝を手にし、世界ランクでも最高5位をつけた。
本人のTwitterを見ると、「あれ? フツーの人っぽい」と勘違いしてしまいそうだが、それはあくまで日常に見せる顔であって、卓球のことになれば話は別だ。さもなくば勝者であり続けることなどできやしないし、誰も彼を「卓球王」と呼ぶこともない(それにしても凄い通り名だ)。
もっと注目を集めてもいい水谷だと思うが、卓球だからか一般にそれほど知られているとは思えない。これは非常に書きにくいが、おそらく卓球ウェアの見た目の悪さが、人気や知名度にマイナスに働いてる。端的に言うなら、シャツイン、ショートパンツ、ショートソックスの組み合わせが大変悪い。ほんのちょっと手を加えるだけで、はるかにマシになるので、卓球協会の人には何とかしてもらいたい(テニスやラクロスのウェアを参考に)。いや、ホントに。それだけで中高生の卓球人気はだいぶ変わると思う。
チャンピオンは異常性を持っている。負ける人は負ける理由を持っている。
全日本卓球選手権大会で史上タイの8度目の優勝を飾った王者・水谷隼はなぜこれほど強いのか。その理由がわかる。
- 作者: 水谷隼
- 出版社/メーカー: 卓球王国
- 発売日: 2016/03
- メディア: 単行本
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『手話を生きる - 少数言語が多数派日本語と出会うところで』斉藤道雄
『手話を生きる - 少数言語が多数派日本語と出会うところで』斉藤道雄
著者の斎藤道雄は、ジャーナリストで、ドキュメンタリー番組プロデュースを多く手掛けてきた人物。『治りませんように - べてるの家のいま』で講談社ノンフィクション賞を受賞した実力派でもある。それがなぜか2008年から明晴学園(特別支援学校)で校長をすることになる。取材対象にのめりこんだ結果だろうとは思うが、すごいキャリアだ。
ちなみに国内の手話には、日本手話と日本語対応手話の二種類があり、斎藤が校長をしている明晴学園では、日本手話と書記言語による授業が行われている。恥ずかしながら、手話にも種類があることを知らなかった。
この辺の事情を知っておくと、日本語と同等に機能する手話(という言語)があるなら、聞こえないことは障害ではなく、ただ少数派であるだけで、サブタイトルが言わんとしていることが分かり、内容もスッと入ってくるだろう。
日本のろう者・ろう児の母語である「日本手話」で授業を行い、手話と日本語のバイリンガル/バイカルチュラルろう教育を実践する日本初にして唯一の学校、明晴学園。
「手話を生きる」子どもたちのことばをとおして、過去から未来へ現在進行形で変わりつつある手話の世界を描く。
- 作者: 斉藤道雄
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2016/02/20
- メディア: 単行本
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『トンブクトゥ - 交界都市の歴史と現在』応地利明
『トンブクトゥ - 交界都市の歴史と現在』応地利明
イブン・バットゥータにより、「黄金の都」として知られるようになったトンブクトゥ。かつてはサハラ交易で栄え、アフリカの交易上重要なポジションを占めた。今では世界遺産に登録されてるが、なかなか日本から気軽に行けるところではない。面白そうなんだけど、マリ共和国はさすがに遠い。ジェンネの「泥のモスク」なんか滅茶苦茶カッコいい(画像参照)。アフリカ的な洗練の極致だと思う。
さて、この本はトンブクトゥにおけるアフリカ交易に迫り、アジアにおけるシルクロードと比較することで、より生き生きと当時の実態を描き出そうとしたもの。著者は応地利明。地味にいい仕事を積み重ねてるので、本作でも期待が持てる。
14世紀から16世紀にかけて、地中海世界とブラック・アフリカとをむすぶサハラ縦断塩金交易をもとに、「黄金郷」また「イスラームの学林」として憧憬されつづけたトンブクトゥ。
史資料と歴史研究の成果を踏まえて同交易の実態を探り、その特質をアジアのシルクロードと交叉させて明らかにする。
- 作者: 応地利明
- 出版社/メーカー: 臨川書店
- 発売日: 2016/02/10
- メディア: 単行本
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『ウェブ小説の衝撃 - ネット発ヒットコンテンツのしくみ』飯田一史
『ウェブ小説の衝撃 - ネット発ヒットコンテンツのしくみ』飯田一史
著者は「衝撃 ネット小説のいま」を連載している飯田一史。ウェブ小説界隈にはほとんど縁がないが、今のところウェブで書かれなければならない必然性を伴った小説に接した記憶はない。だからと言って、衝撃を受けなかったかというと、ボカロ小説にはその存在にショックを受けた。アニメ化された『ニンジャスレイヤー』にはブンブンの無駄遣いを感じた。エンタメ方面では、そこそこビジネス的におもしろい作品が出てるのは分かる。
ただ、おそらく本当に面白いウェブ小説は、読者との交流や人気が可視化されるサイトには登場せず、無編集でザラザラしたエグくてドロドロした奴だと思う(決して大ヒットはしないだろう)。ネットの片隅で細々とやってる情念に満ちみちた個人の殴り書きみたいな。
そういった方面とは真逆で、今後エンタメ路線で爆発しそうなのは、ノベルゲーやLINEのようなフォーマットを使ったストリエだろう。今ならではの環境を十分に活用しつつ、書き手と読み手のニーズをうまく拾ってると思う。ここからヒット作が量産されるのは、時間の問題のはずだ。
メガヒットからスマッシュヒットまでを連発するウェブ小説。投稿サイトから続々とヒットコンテンツが生まれるしくみを出版・経営の双方に通じた著者が、関係者への取材と詳細なデータであざやかに解説。
ウェブ小説の衝撃: ネット発ヒットコンテンツのしくみ (単行本)
- 作者: 飯田一史
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/02/23
- メディア: 単行本
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