BOOK HUNTING

ノンフィクション系の新刊、近刊を平日5冊、週30冊ペースで紹介。児童書から医学書まで。

『そりゃあもう いいひだったよ』荒井良二

『そりゃあもう いいひだったよ』荒井良二 気取らない伸びやかな絵、鮮やかな色使いと、ゴキゲンなタイトル。いつもの荒井良二だ。素晴らしい。傑作しか描けないビョーキに感染してるんじゃないか。大人ぶって「そりゃあもう いいひだったよ」と、表紙のクマ…

『グッド・フライト、グッド・ナイト - パイロットが誘う最高の空旅』マーク・ヴァンホーナッカー

『グッド・フライト、グッド・ナイト - パイロットが誘う最高の空旅』マーク・ヴァンホーナッカー エコノミスト誌の年間ベスト・ブックに選ばれている本書。現役パイロットである著者が、空の魅力を語り倒す。……告白すると、俺自身は空の旅をあまり楽しめず…

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司

『日本語を作った男 - 上田万年とその時代』山口謠司 知ってるようで知らないことは、案外多い。たとえば、「標準語のクリエイターは誰?」と質問されて、すぐに答えられる奴は少ないだろう。俺も知らなかった。そもそも標準語は、誰かがリーダーシップを発…

『自転車で見た三陸大津波 - 防潮堤をたどる旅』武内孝夫

『自転車で見た三陸大津波 - 防潮堤をたどる旅』武内孝夫 三陸大津波で被害を受けた地域を自転車で走った記録。青森は八戸市から宮城の仙台市まで。東日本大震災の一部エリアなのが疑問に思うだろうが、地図を見れば(あっ……)と気づくだろう。そう、「防潮…

『中国第二の大陸 アフリカ - 一〇〇万の移民が築く新たな帝国』ハワード・W・フレンチ

『中国第二の大陸 アフリカ - 一〇〇万の移民が築く新たな帝国』ハワード・W・フレンチ 近年の中国は、国ぐるみでアフリカ資源国への進出を推しすすめてるので、そういった本かと思ったが、どうやら違うみたいだ。うーん、残念。なぜ資源獲得競争で中国が存…

『食の社会学 - パラドクスから考える』エイミー・グプティルほか

『食の社会学 - パラドクスから考える』エイミー・グプティル/デニス・コプルトン/ベッツィ・ルーカル 食卓もまたグローバリズムの縮図だ。世界各地から運ばれてきた食材が並ぶ。アメリカであれば、その多様性は日本の比ではない。それでいて貧相なメニュ…

『ルポ 雇用なしで生きる - スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』工藤律子

『ルポ 雇用なしで生きる - スペイン発「もうひとつの生き方」への挑戦』工藤律子 衰退大国スペインからの報告。スペインの衰退は、リーマンショックよりずっと以前、だいたい300年とか400年くらい前に始まってて、いまだに立て直される兆しがない。もう開き…

『工学部ヒラノ教授の介護日誌』今野浩

『工学部ヒラノ教授の介護日誌』今野浩 人気シリーズ「工学部ヒラノ教授」最新刊は、テーマが介護。ヒラノ教授シリーズを好きな人が、これまでと同じような楽しさを期待して読むと、あまりの内容の重さに絶句しそうな予感が、じんわり紹介文から伝わってくる…

『マルクスと贋金づくりたち - 貨幣の価値を変えよ』大黒弘慈

『マルクスと贋金づくりたち - 貨幣の価値を変えよ』大黒弘慈 「貨幣の価値を変えよ」シリーズの完結編。大黒が渾身のちからを込めて書いたであろう、このシリーズだが、まったく話題になってねー! 岩波から出てるし、柄谷行人が推薦してるし、大澤真幸がコ…

『2020年の大学入試問題』石川一郎

『2020年の大学入試問題』石川一郎 ほぼ大学全入時代となって久しく、入試は大きく変わらなければならないが、その意味を世間はまるで分かっていない。これまでのように産学官に優秀な人材を送り込むため、その見極めとしての入試は、さほど変わらなくてよい…

『カルチャロミクス - 文化をビッグデータで計測する』エレツ・エイデン/ジャン=バティースト・ミシェル

『カルチャロミクス - 文化をビッグデータで計測する』エレツ・エイデン/ジャン=バティースト・ミシェル グーグル・ Nグラム・ビューワー(Google Ngram Viewer)は、16世紀から今世紀初頭までに刊行された書籍をサンプルに、単語やフレーズの使用頻度をグ…

『フューチャー・クライム - サイバー犯罪からの完全防衛マニュアル』マーク・グッドマン

『フューチャー・クライム - サイバー犯罪からの完全防衛マニュアル』マーク・グッドマン この手の警鐘を鳴らす著者は、犯罪者としての素質があると思う。いい意味でも悪い意味でも。本人が自覚してなかったら、悪い意味で。だいたい善良な一般市民が「ドロ…

Books of the Month(2月編)

今月途中から紹介する本を週35冊から30冊に減らした。「もうちょい紹介したい本があったなー」という結果になったものの、実際にはちょうどいい具合だった。中途半端なのを紹介しようとすると、テンション下がるので。2ヶ月ほどノンフィクション全ジャンルの…

『ことばをめぐる諸問題 - 言語学・日本語論への招待』松本克己

『ことばをめぐる諸問題 - 言語学・日本語論への招待』松本克己 そろそろ90歳が見えてきた、言語学者 松本克己の最新刊。この人の最近の仕事、ちょっとおかしい。特に2000年代に入ってからは異常。『世界言語への視座』(2006)、『世界言語のなかの日本語』…

『図解 基礎からわかるはんだ付』大澤直

『図解 基礎からわかるはんだ付』大澤直 「ラズバイ(もしくはArduinoでも可)と3Dプリンタがあれば、今どき半田付けなんか不要でしょ!」とか言っちゃう鼻タレ小僧がいるかもしれないが、はんだ付けのような枯れた技術はなくならない。その証拠に、つい先日…

『美学』アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン

『美学』アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン バウムガルテンの大書にして古典の『美学』全訳が初の文庫化。美学の創始者とされ、本書がなければ、カントによる『判断力批判』にせよ、ヘーゲルの『美学講義』にせよ、この世に出てこなかったとされ…

『簡単! 楽しい! おうちでできる音楽&リズムあそび』鈴木豊乃

『簡単! 楽しい! おうちでできる音楽&リズムあそび』鈴木豊乃 著者の音楽への果てしない愛を感じる。相手が子供だからといって、一切の手抜きを感じない目次構成。むしろ本気も本気。「歩くことはリズムを感じる第一歩!」、「怒鳴りたいときはうたって!…

『経済学の本質と意義』ライオネル・ロビンズ

『経済学の本質と意義』ライオネル・ロビンズ すっかりケインズの陰に隠れて、歴史上に名前だけが残ってるようなライオネル・ロビンズだが、奴のこの『経済学の本質と意義』(1932年)がなければ、その後に出されたケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理…

『話しかけなくていい! 会話術』木村隆志

『話しかけなくていい! 会話術』木村隆志 「話しかけることで会話は始まる」と思っていたので、タイトルには困惑した。しかし言われてみれば、「話しかけられて始まる会話」も少なくないし、それを自らコントロールできているとしたら、ひとつの立派な会話…

『友情化する社会 - 断片化のなかの新たな「つながり」』デボラ・チェンバース

『友情化する社会 - 断片化のなかの新たな「つながり」』デボラ・チェンバース 小田嶋隆の『友だちリクエストの返事が来ない午後』(2015)は友情論で、読み始めこそ「今さら友情かよ、ダッセー!」と思ったが、現代のリアルですぐれたコミュニケーション論…

『宿澤広朗 - 運を支配した男』加藤仁

『宿澤広朗 - 運を支配した男』加藤仁 ラグビーで日本がスコットランドに勝った過去を知らなかった。そんな番狂わせがラグビーでも起こりうるんだな。というか、そのレベルの大金星は、運を支配して実現できるものなのか?宿澤という人物をまったく知らなか…

『グローバル・ベーシック・インカム入門』クラウディア・ハーマンほか

『グローバル・ベーシック・インカム入門 - 世界を変える「ひとりだち」と「ささえあい」の仕組み』クラウディア・ハーマン/ディルク・ハーマン/ヘルベルト・ヤウフほか ベーシック・インカムと言えば、そこそこの先進国が、実験的に行っている政策だと思…

『呼び覚まされる 霊性の震災学』金菱清 編

『呼び覚まされる 霊性の震災学』金菱清 編 俺自身、霊感ゼロだし、霊性とか、その手の話は信じない。だが一方で、そういったことを感じたり、信じたりする人間がいることは分かる。そういう考えや感受性を持つ人間が実際にいるんだから、そこのところは否定…

『インフォーマル学習 (教育工学選書2)』山内祐平/山田政寛

『インフォーマル学習 (教育工学選書2)』山内祐平/山田政寛 今月は、やたらアクティブラーニングの本が出てたが、どれもこれも退屈そうだったのでスルーした。結局のところ、あれもまたフォーマルラーニングの一種だからな。さて本書は、企画、準備された…

『プラグマティズム入門』伊藤邦武

『プラグマティズム入門』伊藤邦武 振り返ればプラグマティズムに注目したことがなかった。なになに「これからの世界を動かす思想として、いま最も注目されるプラグマティズム」? そんな位置づけだったんだ。知らなかったな。では、実際にプラグマティズム…

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治

『大久保利通と東アジア - 国家構想と外交戦略』勝田政治 歴史に「もし」は禁句だが、それでもやはり思ってしまう。「もし大久保が暗殺されていなければ?」おそらく日本の歴史は大きく変わっていただろうし、アジアの中での立ち位置も、世界の中でのポジシ…

『異端思想の500年 - グローバル思考への挑戦』大津真作

『異端思想の500年 - グローバル思考への挑戦』大津真作 京都大学学術出版会から異端思想の本。うん、しっくり来るな。むしろ、京大から王道的な思想書が出てきたら困惑すると思う。著者の経歴も、物理学科を卒業して、経済学部につとめて、西欧社会思想史が…

『「感動」ビジネスの方程式 - 「おもてなし」を凌駕する驚異の手法』杉元崇将

『「感動」ビジネスの方程式 - 「おもてなし」を凌駕する驚異の手法』杉元崇将 泣ける話、腹立たしい話のテンプレートは、さほど手間をかけずに作れるだろう。では、「感動する話は?」となると、幅が広すぎて、たじろいでしまう。しかし「客目線で感動する…

今日の更新

はてな上場のお遊びエントリに、うっかり時間を割いたため、今日の書籍案内は、『ジャワの芸能ワヤン』と『しあわせな いぬに なるには』の2冊のみ。不覚。明日からは平常運転に戻る予定。また、ちょうどいいタイミングだったので、過去の一部エントリを整理…

『ジャワの芸能ワヤン - その物語世界』福岡まどか

『ジャワの芸能ワヤン - その物語世界』福岡まどか インドネシアのジャワ島といえば、ジャワカレーとジャワ原人とガムランくらいしか思いつかないが、人形をつかった伝統的な影絵芝居ワヤン・クリ(Wayang Kulit)も盛んだという。ググってみたところ、「そ…